僕には8つ年上の兄がいるのだが、もうこれでもかって言うくらい優秀だ。

小・中学校時代は常ら成績トップで、1学期は必ず学級委員。

高校は某有名私立高→某有名私立大へと、とんとん拍子で進学し、某大手外資企業に就職した。


こんな優秀な兄に対して、母親は特別な教育はしてこなかったと言う。

そんなんだから、

「なんだ、子育てって楽じゃん」

と思ったらしい。


だから、8年後に生まれてきた僕に対しても、当初はわりと適当に育てていたらしい。

なんとも酷い話だが。


しかし残念ながら、僕は兄のような才能は持っていなかった。

勉強は大嫌いだし、ケンカが弱いからいつもいじめられっこだったし。

小学生のとき、何かのテストではじき出された偏差値は30台だったりした。


こんな僕の酷い有様を見て、母親はようやく、

「このままではまずい」

と気付いたらしい。


そこで一転して、突然教育ママに変貌し、僕を進学塾に放り込んだ。

しかしである。

その塾はやたら予習や宿題を課してくるのだが、僕はそういうのが特に嫌いだった。

挙句の果てに、中学時代はそれらを放棄した為に、塾からやめさせられてしまった。


多分、塾をクビになるやつなんてそうそういないんじゃないだろうか。


この1件で、さすがに母親は諦めたらしい。

もうどうにでもなれ、と言う感じ。


でもその後、僕は自分が才能が無いことと、そのままでは生きていけないことに気がつき、努力してなんとかまあまあのレベルの高校に入学し、大学にも入ることが出来た。


しかし、努力だけではどうしようもないことに気がつき、大学のとき『笑顔』と『ハッタリ』を身に付けた。

なんだかろくでもない人間であるが、それでなんとか就職も出来た。

でも『笑顔』と『ハッタリ』は時々ほころびが出る。

そのたびに僕は情けない思いをする。

挙句に、社会の荒波に耐え切れなくなり、うつ病になった。


だから、僕は才能のある人を見ると、つくづく羨ましく思うと同時に、自分が情け無くなる。


そんな僕に対して、嫁は

「それも才能のうち」

とは言ってくれるが・・・。


でも何か、なんでもいいから、一芸に秀でたいと思っている。

まずは、優秀な兄を、もっとよく観察してみたい。

同じ血統なんだから、なにかヒントがあるはずだ。