先日、義母の葬儀に大阪へ行って来た。
葬儀といっても95才ということもあり、通夜や告別式は行わず、親族だけのシンプルな火葬式。そのまま皆で火葬場に向かい骨揚げを行ってきた。
義母は7、8年前から認知症が悪化。介護施設に入居していたが、数年前からは実の子供も分からなくなっていた。認知症以外は特に大きな病気をすることも無かったが、次第にあちらこちらが衰弱。嚥下機能も低下し、刻み食やとろみ食のようなものを注意して食べていたようだが、今年2月、ついに誤嚥から肺炎を起こして病院に入院。幸い肺炎の方は治まったものの、口からの飲食ができなくなってしまった。
病院から提案されたのは点滴(末端静脈栄養)、中心静脈栄養、経鼻経管栄養、胃瘻などの人工的水分栄養補給。その中で義姉が悩んで選択したのは点滴だった。
治療を受けていたのは急性期病院だったので肺炎が落ち着いた後は退院を求められたが、元の介護施設では点滴をした状態では受け入れてもらえない。このため別な亜急性期の病院に転院。義姉はそこでの嚥下機能回復を期待し、いつでも元の介護施設に戻れるよう介護施設との契約も継続していたようだが、状況は改善せず。亡くなる2週間ほど前からは点滴も難しくなり皮下注射による輸液を行っていたという。転院後約2ヶ月、死因は誤嚥性気管支肺炎だった。
高齢者が誤嚥性肺炎になって入院した場合の余後は極めて厳しい。
ある調査では肺炎を乗り越えたとしても、退院時に胃瘻などの経管栄養を必要としていた場合の余命(生存期間中央値)は約9ヶ月、点滴の場合は僅か約1ヶ月。口から食べられるようになって退院した場合であっても約1年8ヶ月に過ぎない。
誤嚥性肺炎の原因となる嚥下機能の低下が回復しない限り、再び誤嚥して肺炎を起こす。点滴や中心静脈栄養なら口から飲食しないし、胃瘻のように流し込んだ栄養物が胃から逆流することも無いので誤嚥はしないと思うかも知れないが、「唾液」を誤嚥して肺炎になる。しかも高齢者の場合、寝ている間に唾液を誤嚥し、咳き込んだりむせこともなく(不顕性誤嚥)、気付かない内に肺炎になっていることも多いという。
再び誤嚥性肺炎を起こした場合にどう治療するかは純医学的観点を越えた難しい問題であるが、成人肺炎診療ガイドライン2017では、状況によっては肺炎に対する積極的治療ではなくQOLを重視した緩和ケアを行うことも選択肢として示されている。がんなら緩和ケア病棟への転院や在宅医療へと促されるところだが、超高齢者の肺炎の場合には亜急性期や慢性期の病院のまま緩和治療に移行するという感じだろうか。
ちなみに誤嚥を根本的に防ぐ方法はあることはある。
咽喉頭分離。つまり声帯のあたりで喉頭を塞ぎ、喉に呼吸のための永久気管孔を開ける。これなら食べ物も飲み物も唾液も誤嚥することは無くなる。自分の声を失うことになるが、シャント発声という方法で発声が可能となる場合もあるし、何より口から味わって飲食ができる。ただ義母の場合、95才という年齢や衰弱した全身状態からこの手術は無理だったと思うし、可能だったとしても本人が希望しない可能性もあった。
今年もど根性ツツジが空中に浮かぶ花束のように咲いていた。
こちらは花が咲く前の写真。黄色いパイプの中から枝が出ているが花がないと目立たないので気付いていなかったようだ。