食道がんになって最初にCT画像を見た時の印象は強烈だった。

 

先に見せられたのは輪切りの水平断面。食道のがんが気管を押し込んでいて浸潤している可能性があるというが、その当時はどこが食道で、どこが気管なのか、その時はよく分からずあまりピンと来なかった。

 

画面が胸のレントゲンで良く見るような垂直断面に切り替わる。胸一面にビー玉をばら撒いたような異様な映像。大きいものだけでも10個近かったかも知れない。転移したリンパ節だという。少し離れた鎖骨の近くにも大きな星。かなり厳しい状態であることはさすがに素人の私にも分かった。

 

 

それが放射線と抗がん剤で治療した後、胸のまわりのリンパ節転移は全て消えた。鎖骨近くにはまだ影が残っていたが、これも転院後の診断でがんではないと判定された。

 

その治療から3年。今、思うのはリンパ節への感謝だ。リンパ節というフィルターが無ければ、がん細胞はリンパ管から大静脈へ、大静脈から肺へ、そして全身へと転移していたに違いない。免疫の砦とも呼ばれるリンパ節が、がんの転移を遅らせ、がん治療という援軍が間に合ったのだと思う。そう考えると「良く頑張った」と私のリンパ節を褒めてあげたい。

 

 

(蛇足)

そう言うと手術でリンパ節郭清を行った人は不安に思うかも知れない。

リンパ節は沢山あるから少しくらい切除しても問題は無いなどという説明を目にすることもあるが、それは少し子供騙しのような説明だと私は思う。リンパ節は免疫の砦、決して無用の長物では無い。リンパ節を多数切除すると免疫機能はやはり若干は低下すると思うが、手術後に転移する可能性が1番大きいのが局所リンパ節なので、目に見えないがんが既に転移している可能性があるリンパ節を切除する方が遥かにメリットが大きいのだと思う。