放射線治療では副作用が現れる時期によって、治療後に間もなく起きるものを急性期障害、暫く経ってから起きるものを晩期障害と呼んでいる。食道がんの晩期障害の主なものには、心嚢水貯留、心膜炎など心臓に障害が出る心毒性の障害、放射線性肺臓炎、胸水貯留など肺に障害が出る肺毒性の障害、食道そのものに障害が出る食道狭窄や食道穿孔などがある。晩期障害は5年後、10年後になって初めて症状が出ることもあると言う。

 

私自身は放射線治療終了から2年半、これまでに晩期障害らしきものとして肺臓炎、心嚢水貯留、食道狭窄を経験しているが、いずれも軽度で治療を必要としたものは無い。医師に相談した時も、良くあることなので気にすることはないと言われた。これで終わりということなら良いのだが、肺や心臓の炎症を起こした部分が繊維化して悪化しないかと少し不安ではある。あるいは、もうその段階も終わっているのかも知れない。

 

食道がんの経過観察で定期的に胸部CT検査を行っているし、他にも特定健康診断での胸部レントゲン検査、それに昨年12月の頭部MRI検査の時には心電図も取っているので大きな問題は無いハズだが、少し気になる症状がある。少し激しい運動をすると、動悸や息切れが以前より激しい気がするのだ。加齢や運動不足が原因と言われればそんな気もするが、もしかすると放射線治療の影響なのかも知れないとも思うこともある。いずれにしてもこの程度の代償で食道や胃袋を温存できるなら放射線治療は大変お得だと思う。

 

食道がんの放射線治療後の障害についてネット上をあちこち検索してみても情報が少ない。情報があっても評価がバラバラだ。「晩期障害は軽度なものが多く、重症化したり、死亡することは稀」というポジティブなものがある一方、「放射線治療で臓器を温存できると言っても再発することも多いし、治ったと思っても晩期障害というものがある。重症化すると治療が難しいだけでなく、死亡する可能性もある(だから手術の方が良い)」等のネガティブな意見もある。

 

いろいろ探っていると、議論のベースとなっている放射線治療が異なっているのではないかと思うようになった。

 

例えばJCOG9906という臨床試験ではGrade 3/4の晩期障害として心嚢水貯留16%、肺臓炎4%、胸水9%、食道狭窄・穿孔などが13%、合計31%あった。治療関連死は5.3%、5年生存率は36.8%だったという。今からすると随分酷い結果だ。

 

その後に行われたJCOG0909という臨床試験ではGrade 3の晩期障害は9.6%、Grade 4の晩期障害や晩期障害による死亡例は無い。5年生存率は64.5%、5年食道温存率は54.9%と大幅に向上している。

 

ちなみにJCOGというのはがんの臨床試験などを主導する組織の名前、その後の9906は、1999年に開始した6番目の臨床試験であることを示す。したがって、JCOG0909は2009年に開始された臨床試験ということになる。

 

JCOG9906は今から丁度25年前の1999年、Windows95/98時代に開始された臨床試験であり、この方法で治療を行う施設は今はほとんど(全く?)無いと思われるのだが、その結果は、今でも重視されることが多いようだ。一方、今実際に行われているのはJCOG0909と同じ方法か、あるいはIMRTなどのより高度な治療法だと思う。

 

一口に放射線治療と言っても、治療装置、放射線の照射の仕方、放射線の強さ、同時に使用する抗がん剤の種類や量など、その内容はさまざまである。放射線治療の晩期障害に限らず、自分がどのような方法で治療を受けたのか、あるいは受けようとしているのかを確認して情報を取捨選択することをお勧めする。

 

 

 

陽当たりの良い所にスイセンが咲いていました