余命とか生存率とかが出て来る話です。

そのような話が苦手な方は、ここでご退場ください。

 

秋の青空に赤トンボ、小さい秋見つけた

 

 

手術が出来ないステージⅣaの食道がん。

放射線治療が効いて癌が小さくなったので手術が出来るようになった。

手術で悪い所を取ってもらえさえすれば癌は必ず治る。

そんな夢のような話を信じることが出来れば、いろいろ悩まずに済むのだが

 

食道がんで根治的化学放射線治療(dCRT)を受けた後の救済手術はかなりリスクが高い。見るサイトによってデータが異なるが、食道がんステージⅣaの余命(生存期間中央値)は大体1年半、5年生存率15~20%程度だろう。放射線(dCRT)後に救済手術を受けると、余命は約2年、5年生存率は30~40%程度になるようだ。

 

ここで人の見方は2つに分かれる。

自分ならきっと大丈夫、長生きができると思えば、5年生存率が約2倍になる救済手術は魅力的だ。でも、自分は無理かも知れないと思うと、救済手術は微妙だ。余命は1年半から2年に半年ほど伸びるが、その代償として手術の痛みとダンピングや逆流といった術後の後遺症を負うことになる。半年だけの延命なら、痛い手術や辛い後遺症が残る手術は見合わないと考える人もいるだろう。

 

まずは抗がん剤(+免疫チェックポイント阻害剤)を続けて、それでも駄目なら救済手術という考えもありそうだ。もちろん、その時には手術は出来なくなっているかも知れないので、そのリスクは取らないといけない。また、放射線治療終了から時間が経つと私のように癌が消えるとこともあるのだが、救済手術を判断するタイミングについては長くなりそうなので別な機会にする。

 

上記は手術が成功した場合の話であって、もし手術が上手く行かずに癌が残ってしまった場合(R0手術が出来なかった場合)は残される時間は半年か1年位かも知れない。術後平均の2年も生存するのは難しそうだ。また、癌そのものが悪化して亡くなるのでは無く、救済手術を行うことによって死亡する治療関連死が10%か、恐らくそれ以上ある。抗がん剤治療でも放射線治療でも治療によって死亡することはあるのだが、救済手術の治療関連死率は比較にならないほど高い。

 

このように救済手術のリスクが高いので、2017年版の食道癌診療ガイドラインラインでは救済手術を行うこと自体が推奨されていなかった(標準治療ではなかった)。しかし実態としては実施される場合も多かったためか2022年版では弱く推奨するに改定されたが、救済手術が高リスクであることに変わりは無い。

 

なんやかんやと考えると

「放射線治療で癌が小さくなりました。今なら救済手術が出来ます」

と急に言われても、決断するのはなかなか難しい。

 

手術が出来ないステージのがん患者。折角救済手術が出来るようになったというのに喜んで手術を受けようとしない患者にもそれなりの理由があったりもするのだ。

 

 

(蛇足1)

根治的化学放射線治療でがんが一旦は消える人(完全奏効となる人)はステージⅣaで40%ほどいるという。ならば癌が消えるまでには至らなくても救済手術が出来る程度に小さくダウングレードする人もそれなりの割合でいるに違いない。放射線治療を受ける時に癌が消えることもある、救済手術が受けられることもあるなんて誰も教えてくれなかった。

 

(蛇足2)

私はステージⅣaだったので、自分には手術というものは無縁だと思っていた。救済手術という言葉も知らなかったので外科医の話を聞きに行くまでの間に慌てて調べた。以前のブログで救済手術を勧められた時に不快に感じた理由のひとつとして救済手術が上記のように高リスクだからというのを挙げたが、これはブログを書く時に後付けした理由だ。本当は