私は根治的化学放射線療法で幸運にも食道がんが消えた(完全奏効)が、次に気になるのはやはり再発。5年間再発しなければ完治と見なされるので、それが次の大きな目標だった。

 

ところが、昨年、下咽頭に異時性多重がんが見つかった。

今年は食道の原発巣の近くに異時性多重がん(疑い)が見つかった。

二度あることは三度ある。

この調子だと、この先も多重がんが、がんがん見つかるのかもしれない。

*ここでは多発がんも、重複がんも区別せず、全て多重がんとしている。

 

多重がんは再発とは異なり新しく発生したがんなので、早期に発見し治療すれば抑え込める可能性が高い。とは言っても、発見が遅れたり、治療効果が良くないこともありえる。何とか抑え込んだとしても、今度は多重がんの方が再発して悪化する可能性だってある。そんな多重がんが、毎年のように発生し続けたら、いつかは制御不能になるに違いない。

 

 

再発の場合、ステージによって異なると思うが、私の場合、恐らく50%位だと思う。

再発する場合は1年以内が一番多く、2年以内が80%位と段々減って来て、5年以降に再発する確率は5%程度となって、治療後5年間無再発なら完治と見做されることが多い。再発する場所はやはり食道、周辺リンパ節が多いが、肺や肝臓などへの遠隔臓器転移もある。私の場合、放射線治療を受けているので周辺リンパ節転移の確率は低いらしい。

 

一方、多重がんが発生する場所は、食道以外では下咽頭、中咽頭などの頭頸部、次いで胃、肺、大腸、前立腺などに多いらしい。ちなみに、これらに共通するがんの発生要因は飲酒と喫煙だろう。

食道がんは特に下咽頭との関連が強く、食道がんになった人の20~40%位の人が下咽頭がんに、逆に下咽頭がんになった人の40~60%位の人が食道がんになるそうだ。

 

下咽頭以外の部分も含めた全体的な多重がんの発生率は、レポートによりバラツキが大きくて良く分からなかった。中には、食道を除いた重複がんだけで56.7%というものもあった。

 

多重がんの発生率を見る時に注意しないといけないのは観測期間。例えば一定数の食道がん患者の集団を3年間観測した場合と、同じ集団を5年間観測した場合では多重がんの発生率が異なって来るハズなので、長期間の観測データの方が多重がんの発生率がより高くなると思われる。

 

それに日本人男性は3人に2人、女性は2人に1人が生涯1度はがんになるという。ならば、生涯に2回以上がんになる人、つまり多重がんになる人も少なからずいる。生存率に実測生存率と特異的生存率があるように、多重がんの発生率も実測発生率だけでなく、日本人の平均よりどの程度多いのかを示す数値も欲しい所(私が知らないだけかも知れない)。

 

また食道がんや頭頸部がん等は罹患率が少ないので誤差範囲かなと思うが、胃がん、肺がん、大腸がん等になると食道がんになっていない人でも罹患率が高いので、胃での多重がん発生が何%と言われても平均より、どの程度多いのか少ないのか直ぐには分からなない。

 

ということで、多重がんの発生率はかなり高いらしいということは分かった。特に下咽頭、中咽頭などの頭頸部に多く発生することは分かったが、具体的数値は良く分からなかった。

 

多重がん発生の経時変化については、下咽頭がんに限定しての例であるが、食道がんと同時に見つかることが一番多いが、食道がん罹患から1~5年後、5~10年後と発生件数は段々減って行く。しかし、10年以降も依然として発生が続いているという記事があった。

https://gansupport.jp/article/treatment/test/16033.html

 

何故だろう? 

再発の確率が時間経過と共に減って行く理由は分かるが、多重がんが何故減って行くのか分からない。一般的には、5年、10年と時間が経過すると年齢も次第に高くなって行くので、がんの発生率も徐々に高くなって行きそうな気がする。何故、食道がん患者は時間が経つにつれ異時性下咽頭がんの発生が減って行くのだろう…

 

私が考えた仮説は「食道がんに罹ったことで健康に気を配るようになったから」

どう思います?

 

以前、札幌のある放射線治療医が、初期の喉頭がんや舌がん患者の相対生存率が100%を超えることがあると書籍に書いていたことを思い出す。がんになったことにより自分の生活習慣を見直し、定期的に診察を受けることによって、がんにならなかった人よりむしろ長生き出来たという見解だった(これって、キャンサーギフト?)。

 

多重がんは再発とは異なり、新しく発生するがん。

がんの発生を予防する行為が多重がんの発生を減らすことになる。

禁酒、禁煙、適度な運動、適正体重の維持、野菜類の摂取、そして定期的な診察。

それで多重がんの発生が減らせて大事にならずに済むなら実践してみる価値は大いにある。

 

 

(追記)

データを見直してみると時間が経つにつれて下咽頭の多重がん“発生件数“が減っているが、“発生率”は分からないということに気が付いた。もし、時間経過と共に対象とした食道がん患者が亡くなって行ったので発生件数も次第に減って行ったということであれば、寂しい。