私が今お世話になっているのは東京ビッグサイト近くのがん専門病院。

自宅から通院に片道2時間ほどかかる。

何故そんな遠くの病院に通院し続けているのかというと…

 

食道がんの手術は難しいので、なるべく多くの症例をこなしている病院の方が良いという。年間の症例数の多い病院群と少ない病院群で比較すると、症例数が多い病院の方が合併症や治療関連死が有意に少ないという記事を読んだことがあった。確か2年ほど前までは日本食道学会のホームページにも年間手術数50件以上の施設を推奨すると書いてあったと記憶しているのだが、今は見当たらない。記憶違いだろうか…

 

私の場合は放射線治療後の救済手術。

救済手術は通常の食道がんの手術より更に難しく、院内死亡率は一説では10~15%程度。つまり手術のために入院したけれど、2度と自宅に戻れなくなる人が10~15%程度いるという超ハイリスクな手術だ。私は癌で死ぬのは仕方が無いと思っているが、手術によって死ぬのは嫌だ。だから、多少遠くても、救済手術の成功率が少しでも高そうなハイボリュームセンターを選んだ(在院死亡率8%、5年生存率40%)。

 

ところが救済手術の直前にがん消滅と判定され、手術はキャンセル。経過観察を続けて行くことになった。経過観察なら遠くの病院まで行かなくても自宅近くの病院でも出来る。でも放射線治療後は再発する事が多いというので、まあ1~2年様子を見てから転院しようと考えていた。

 

そうして経過観察を続けている内、昨年、下咽頭がんが見つかった。

食道がんの転移では無く、別ながん、いわゆる多重がんだ。2ヶ所見つかったのだが、いづれも生検で除去されてしまった(ことになっている。もちろん、そんな上手い話はないだろうから、いずれ再発して来るに違いない)。

 

流石だと思った。

生検でがんが取れた事では無く、下咽頭の小さながんを見つけたことが凄い!

 

下咽頭がんは見つけ難い場所にある。しかも、生検鉗子で殆ど取れてしまうような、恐らく大きさ5mm以下の小さな異変を見つけるのはかなり難しいと思う。ハイボリュームセンターなどの大きな病院ほど多くの患者を診るので、必然的に診断の感度、正度が高くなる。つまり、難しい手術や治療だけで無く、実はがんの早期発見も得意なのだ。再発や転移、多重がん等を早期に発見できるので、結果的に治療成績も良くなる。

 

自宅近くの一般総合病院では恐らくこの段階では見つけられなかったに違いない。ようやく見つけた時にはもっと進行していただろうと思っている。経過観察だけなら自宅近くの総合病院でも同じ、という認識は甘かった。

 

完全奏効(CR)と判定され経過観察を続ける私にとって最も重要なことは、再発や転移を早く見つけ、大事になる前に治療してくれること。自宅近くの病院に転院するより、そのままがん専門病院で経過観察を続けてもらった方がその確率が高い。だから、私は片道2時間近くかかる遠距離通院を続けている。