私の今後の治療方法はまだ決まっていないが、その候補の1つが光線力学的療法(PDT)。

少し調べたことを備忘録としてまとめておく。

 

一番参考になったのは下記の文献だ。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/59/12/59_2740/_pdf

 

 

PDTはがん細胞に集積し易い光感受性物質(タラプルフィンナトリウム、商品名レザフィリン)を注入した後、レーザー光を当てる。その時に起きる反応によってがん細胞を内部から破壊し死滅させる治療法。食道がん以外にも肺がん、胃がん、子宮頚がん、膀胱がん、加齢性黄斑変性症などで保険適用がある。

 

食道がんにPDTが適用可能となるのは、

・化学放射線治療または放射線治療後の遺残または再発

・放射線治療前、T4大動脈浸潤ではなかったこと

・リンパ節転移や遠隔臓器転移がないこと

・深達度はT2まで

・大きさ概ね長径3cm以下で食道の半周以内

・頸部食道に浸潤していないこと

・EMRやESDが適用不可

・救済手術が適用不可または拒否

等とかなり限定的だ。

 

これまでは、放射線治療後に遺残または再発した場合、まず内視鏡手術。それが駄目なら救済手術。それも駄目なら抗がん剤(+免疫チェックポイント阻害剤)という流れ。内視鏡手術か救済手術かの分かれ道はほんの僅か0.1~0.2mmの深達度の差だ。

 

合併症が比較的少ない救済内視鏡手術と、院内死亡率10~15%、縫合不全や肺炎などの合併症を高発する救済手術の差は、とてつも無く大きい。救済手術で入院する時には、もう二度と家に帰れないかも知れない、という覚悟が必要なのだ。PDTはそのギャップを埋める保険適用可能な唯一の治療法となる。

 

PDT保険認定前の第Ⅱ相臨床試験では完全奏効(CR)率23/26(88.5%)、深達度T1の病変に限定すればCR率100%、重篤な合併症なしと素晴らしい。最近のレポートが少ないが、CR率7/8(87.5%)、T1症例ではCR率100%、治療関連死無し、ただしCRに至らなかった1名は2年以内に原病死したというのがあった。また10例以上実施でCR率60~70%という所もあった。

 

軽度の食道痛(53.8%)、発熱(30.8%)、食道狭窄(7.7%)などの合併症が報告されている所もある。なお、術後の無再発期間中央値、局所再発率、術後生存率なども気になるが、まだ調べ切れていない。

 

治療には1~2週間の入院が必要。光感受性物質(レザフィリン)を注射し、がん腫瘍に集積した頃合(4~6時間後)で内視鏡でレーザー照射を行う。2日目には照射漏れの部分をチェックして、もしあれば追加照射する。

 

体内に残ったレザフィリンが光線過敏症を起こす可能性があるため入院中は遮光された病室(500ルクス以下、蛍光灯程度)で生活。遮光部屋から出る場合や退院しても暫くの間は、長袖、長ズボン、帽子、手袋、サングラスやマスク等の着用が必要。屋外への外出時には日焼け止めクリームも塗った方が良いかも知れない。

 

治療開始1週間後位で光過敏症試験を行いパスすれば退院(もちろん順調に回復した場合)。試験にパスしなければ入院を継続してレザフィリンが体内から排出されるのを待つ。

 

レーザー光を照射した食道内部は炎症を起こし、やがて潰瘍化して行くが、その間の食事は感染症や食道痛の原因となる場合があるので、入院後2~3日は絶食、点滴栄養。様子を見ながら経口普通食に変えていく。放射線や抗がん剤での治療の場合は食道炎の痛みに加えて吐き気や食欲不振で食べられないことが多いが、PDTの場合は吐き気や食欲不振は無さそうだし、3日目頃から点滴チューブも外れるので化学放射線治療の時より楽そう。

 

治療後は内視鏡などで経過観察を続け、順調ならば治療3ヶ月後に効果判定。CRっぽい場合は更に1ヶ月後に再判定を行い問題が無ければ初めてCR確定となる。その後は3ヶ月おきの経過観察。次第に経過観察の間隔を伸ばして行く。

 

残念ながらCRに至らなかった場合でも、治療条件を満たしていれば(放射線治療と異なり)PDTは複数回受ける事が出来る。PDT不適の場合は救済手術。それも駄目なら抗がん剤(+免疫チェックポイント阻害剤)での治療となる。

 

食道がんで光線力学的療法(PDT)を受けられる施設は全国でまだ40箇所程しか無い。

https://www.jpa-pdt.or.jp/pdt_medical/

1番実績が多いと思われるのが国立がん研究センター東病院だが、それでも年間40症例未満。東京都内には4施設あるらしいが、治療実績は探し出せ無かった。まだまだ、適用されることが少ない治療法だ。

 

治療費用は2週間入院、3割負担で35~40万円位という情報があった。

PDT治療は保険適用だが、遮光管理のため、恐らく個室または4人部屋等を1人で占有することになる。これでは病院としてはPDT患者を受け入れると機会損失(収入減)になってしまう気がする。ひょっとしたら、これがPDT実施可能な施設が拡大しない、そして初発には適用されない1つの理由になっているのかも知れない、等と妄想してみる。

 

 

(蛇足)

PDTが奏効しない人などを対象とした光免疫療法の治験(Ex-PIT試験、現在登録停止中)がある。今の状況が一段落したら念のため光免疫療法の方も調べておこうと思う。

 

(追記)

「患者が大部屋に入院する場合はカーテンで仕切られた廊下側のベッドへ」という文献もあったので上記の妄想は、やはり妄想だった。また、治療中はクロレラ加工品,ライム,レモン,オレンジ,セロリ,パセリ,イチジク,ドクダミ等の食品は避けた方が良いらしい。