癌であることを患者本人には知らせず、医師と家族だけの秘密としておく。

複雑な思いを抱えながら病人の前では明るく振る舞う家族、自分が癌だと勘付いてはいるが知らぬ振りをする病人、そんなTVドラマを最後に見たのはもう何年前の事だろう。

 

今は2人に1人(男性は3人に2人)が生涯に1度は癌になる時代。生存率も向上して来た。癌である事を本人には伝えない方が良いと考える人は殆どいないだろう。

 

がん告知のされ方は様々なようで、予め「次回の診察の時、ご家族と一緒に来てください」とでも言われれば察しも付くが、「詳しく検査してみないと断言出来ませんが、これは多分がんです」といきなり告知される場合も多いようだ。

 

がん告知は一般化したと思うが、インフォームドコンセントの方はどうだろう。

インフォームドコンセント、日本語では「説明と同意」と訳されることが多い。

ちなみに病院では内視鏡検査やCT撮影等の際に同意書の提出を求められるが、同意書は英語でコンセントフォーム。インフォームドコンセントのコンセントだ。

 

医師が「あなたは癌です」と言えばがん告知はしたことになるのだろうが、インフォームドコンセントの方は患者の同意(コンセント)が必要である。

 

医師: あなたは癌です

患者: 解りました。私は癌である事に同意します

これはナンセンス。患者が同意するのは病状ではなく、治療方針や治療法だ。

 

どこにどの位の大きさの癌やリンパ節転移があって、ステージxだという病状については患者は同意も拒否も出来ない。これからどのような治療をするのか、その成功率や副作用/合併症/後遺症、期間や費用、その治療をしないとどうなるのか、代替の治療法はあるのか等、医師から情報を与えられる(インフォームされる)こと。その上で、患者がそれを理解し、自由意志で同意する(コンセントする)ことをインフォームドコンセントと言う。

 

私の場合、食道がんで胸の所に腫瘍があること、リンパ節転移が7~8個あること、翌週から放射線と抗がん剤で治療を始めることを告知された。積極的に質問しなかった自分も良くなかったのかも知れないが、上記に言うインフォームドコンセントとは程遠いものだった。

 

いろいろな方々のブログ等を拝読すると、インフォームドコンセントの実施は病院による格差が大きいのではないかと思う。なんとなくではあるが、大学病院やがん専門病院、がん拠点病院など治験に参加しているような病院は比較的しっかりしている感じがする。私が治療を受けた公立の総合病院等では治験に参加する余力があるハズも無く、また医療訴訟の経験も乏しいためか、かなり適当という印象を持つが、実際はどうなのだろうか…

 

 

◾️追記

当時の私は治療を進めながら古い写真やアルバムなどの断捨離を進めていたので、同意書のコピーの束も捨ててしまい、今は確認出来ないが、そう言えば、放射線治療や抗がん剤治療を始める時にも同意書があったような気もする。

 

私は手術は受けていないが、手術前には同意書を提出するハズだし、そこにはきっと手術のリスクや合併症、後遺症などについても書かれているに違いない。

 

説明は口頭ではなく書面でも良いので、インフォームされたと言えばインフォームされたことになるし、サインすれば同意したことになる。もし説明が不十分だと思うなら、それはサインする前に説明を求めなかった患者側の責任という事になるのだろう。