食道がんの治療では術前化学療法(抗がん剤+手術)が約70%と主流で化学放射線療法(抗がん剤+放射線)は約20%と少数派。その約20%の中には、
・私のようにステージⅣaで手術が選択できなかった人、
・高齢であったり、体力的に手術に耐えられないと判断された人、
・心臓疾患などの合併症があり手術に適さないと判断された人
等が含まれているだろうから、自ら希望して化学放射線療法を選択する人はかなり少ないと思われる。
食道がんステージⅠ〜Ⅲの標準治療では、手術の他に化学放射線療法も選択できることになっているが、何故、手術を選択する人が多いのだろう。
・先生に全てお任せしただけ
・手術すれば癌は治ると思っていたので他の治療法など考えなかった
・放射線って何か怖いし、危ないんでしょ
・そもそも化学放射線療法なんて提案されなかった
・化学放射線療法の話も聞いたが、体力的に手術が出来ない人やどうしても
手術をしたくない人向けで、治療成績も手術に劣ると説明を受けた
・化学放射線療法で癌が一旦消えても再発することが多いと聞いた
再発して難しい救済手術をする位なら最初から手術した方が良い
・興味はあったが、既に術前抗がん剤治療を始めていたので言い出し難かった
そんな所であろうか…
ところで、最近の化学放射線療法の治験ではちょっと興味深い結果が出ている。
JCOG0502: ステージⅠを対象とした化学放射線療法の治験
5年生存率 85.5% (術前化学療法+手術群は86.5%)
5年食道温存 80.4%
JCOG0909: ステージⅡ、Ⅲを対象とした化学放射線療法の治験
5年生存率 64.5% (術前化学療法+手術は62.4%?、下記参照)
5年食道温存 54.9%
JCOG0502では手術と化学放射線療法の5年生存率はほぼ同じ。
化学放射線療法の方が再発がやや多く、救済手術等で追加治療を受ける人もいたが結果的には5年後でも8割程度の人が食道を温存できている。
これにより手術も化学放射線治療も治療効果はほぼ同じと結論しているようだが、QOSという観点を加えると手術と化学放射線療法は同等どころか、化学放射線治療の方が優れていると私なら思う。
手術の場合、食道も胃袋も無くなっているので、逆流やダンピング等の後遺症が100%“確定的”に残る。あるのは後遺症の症状が軽いか重いかの違いだ。化学放射線療法でも後遺症が残ることがあるが、こちらは“確率的”。
後遺症が出る人も出ない人もおり、後遺症が出てもその程度は様々。
結局、人それぞれの価値観の問題なんだと思うけど…
JCOG0909は化学放射線療法だが癌が消えなかったり再発した場合はJCOG0502同様、積極的に内視鏡手術や救済手術を行う。放射線の強さや当て方、抗がん剤の量などで治療効果を維持しつつ放射線の障害を少なくなるよう工夫したもの。
こちらは単群試験なので結果を何と比較するかが難しい。
全がん協生存率で体腔鏡的手術+化学療法で5年生存率(2010-2014)を調べるとステージⅡで69.0%、ステージⅢは50.8% だ。これをJCOG0909治験参加者の比率(ステージⅡ:63.8%、ステージⅢ:36.2%)で調節するとステージⅡ/Ⅲ混合の5年生存率62.4%という数字が出る。この数字の算出論拠が正しいなら、JCOG0909での5年生存率64.5%は術前化学療法+手術の62.4%より少しだけ良いことになる。
しかも完全奏効(CR)率58.5%、5年無増悪生存率48.3%、5年食道温存率54.9%
これって、かなり良いんじゃない⁈
ただし、全がん協のデータは幾つかの病院がホームページ等に掲載している治療実績と比べるとあまり良く無い。食道がんの手術は難しいため病院や医師の差が大きいと言われるが、その辺りも考えると、JCOG0909の結果で化学放射線療法の方が手術より良いと判断するのは少し早急な気もする。
そのうちもっとハッキリして来ると思うが、今、治療法を選択しようとしている人は化学放射線療法も検討して見る価値はありそうだ。知らけど〜