「電話の声までそっくりなんだよ」


三年前の今日、愛する女性との人生をあきらめた。



イタリアの片田舎に逃げ、一人になって一週間考えた。


当時使っていた英伊辞典を開いたら、彼女の電話番号を書いた紙切れが出てきた。イタリアから何度も何度も電話しようとして電話できなかった。




それまで過去を後悔することは一度もなかったが、今でもあのときの判断が正しかったか悩んでいる。


長い人生、一度くらいは信念や仕事よりも愛する女性との人生を選ぶべきだったのではないかと。



結局、すべてを捨てて信念を選んだ。




彼女の結婚の話を聞き、もう二度と会うことはないと思っていた。




神は残酷だ。


私を彼女に会わせた。しかしそれは違う女性。たとえ、どれだけ似ていようとも別の人。



「電話の声までそっくりなんだよ」



彼女の口から冷たい台詞を聞かされるなら過去をすべて忘れることができるのかも。そしてそれを望んでいる。



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