5月8日から、G7 がオンラインで開催されます。
昨年のG7財務大臣会合では、法人税率「最低15%」の国際基準について議論され、法人税率の引き下げ競争に歯止めをかける共同声明が出されたことが注目されました。
続いて10月には、法人税の最低税率を15%に定めたり、「GAFA」に代表される巨大グローバル企業に適切に課税できるようにしたりする新たな国際ルールについて、OECD=経済協力開発機構の加盟国など136の国と地域が最終合意に達しました。
デジタル課税を取り巻く状況は、刻一刻と変わりつつあるが、日本でプラットフォーマーへの課税が一筋縄ではいかない事例は、アマゾンに限った話ではない。動画配信サービスで急成長しているネットフリックスは2015年に日本市場に参入、コロナ禍でも順調に会員数を伸ばし、2020年8月には有料会員数が500万人を超えたと発表している。そんなネットフリックスの日本法人も、今年3月、2019年12月期までの3年間で計約12億円の申告漏れを東京国税局に指摘され、修正申告したことが明らかになっている。
報道によると、ネットフリックス日本法人から譲渡された配信権を利用して、同社のオランダ法人が日本で配信サービスを手掛け、巨額の利益を上げていたが、日本法人がその業務に見合った利益を受け取っていなかったと判断されたという。
このように、日本でビジネス展開して大きな収益を上げているにもかかわらず、それに見合った法人税が日本に納税されていないと見なされるケースは、今後も出てくるのではないだろうか。
世界的にデジタル課税のルール化は急ピッチで進んでいる。昨年7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でデジタル課税に関する国際的なルールが合意され、売上規模200億ユーロ(約2.6兆円)で利益率10%超の大規模多国籍企業は、10%を超える超過利益の25%を売り上げに応じて市場国に配分するということが決まった。この合意は、巨大プラットフォーマーの事業戦略にとっても大きな転換点となるかもしれない。
一方で、日本は租税回避という一般的な問題へのルール作りの面で、他国に大きく後れを取っている。前出・森信氏が警鐘を鳴らす。
「違法な『脱税』と適法な『節税』の間にある『租税回避』は、いわばグレーゾーン。欧米ではグレーゾーンの租税回避についてやりすぎるとアウトという基準が示されて対応が進んできたが、日本にはそれがない。グレーゾーンとはいえ、どこまでが許されてどこからがアウトなのか、その基準を法律で明確化しておく必要がある。
確かに、これまでグレーな税金逃れについて国税当局が指摘してきたが、それはあくまで解釈・運用という形で、そのつど指摘してきたもの。いわば“イタチの追いかけっこ”を繰り返してきたわけだが、それではせっかくデジタル課税でG20で大筋合意できて国際ルールが整備されても対応は十分とは言えない。国際的な租税回避について今のうちに日本でも明確なルールを整備しておかないと、国際ルールができたからといって安心できないのではないか」
日本は、デジタル課税の“後進国”の地位にある。税負担の公平性の観点からも、日本におけるデジタル課税へのルール整備は急務の課題だろう。
【デジタル課税の仕組み】
<大規模な多国籍企業の利益を市場国に配分>
多国籍企業の物理的拠点が置かれていない市場国に対して、公平な課税権の配分を行うためのルールです。
<適用対象となる企業>
このルールが適用されるのは、売上高200億ユーロ(約2.6兆円)超、かつ利益率10%超の多国籍企業です。要件を満たせばIT企業に限らず適用されます。
売り上げの基準値が約2.6兆円と大きいことから、世界の大規模企業上位100社程度が対象になると言われています。日本で適用対象となるのは数社程度と考えられ、ほとんどの企業は適用対象にはなりません。
<利益配分の仕組み>
このルールが適用される多国籍企業は、利益の一部について以下のルールで市場国に配分します。
1.超過利益(利益のうち売上の10%を超える部分)の25%を
2.その多国籍企業が100万ユーロ(約1.3億円)以上の収益を獲得している国(市場国)に
3.その多国籍企業の市場国での収益に応じて配分する
ちょうど、ファイザー社とモデルナ社の1-3月期の決算の記事が出ましたので簡単にまとめてみました。
(括弧内は前年同期比)