前回、元連合赤軍の植垣さんについての記事を書いたが、
植垣さんのことを思うと、つい反射的に元オウム真理教の
最高幹部だった上祐さんのことも思い出してしまう。
自称フリージャーナリストを名乗っているだけあって、
歴史的事件をしる人物とは直接会ってみたいという興味があり
もう7年ほど経つが、上祐さんのところ(ひかりの輪)に
個人的取材へゆき、上祐さんとふたりで30分から1時間ほど
対話したことがあった。
(詳しくは2017年2月28日と3月2日にアメンバー記事『J』で
書いてアップしている。これまでコメントでやりとりさせて頂いた
事がある人はアメンバー申請をしていただければ承認させていただくので
ご覧頂きたい。ネトウヨとかに拡散されたくないのでアメンバー記事に
したが上祐さんと撮った写真なども載っている)
面談会場にいったついでに元オウムの人達(ひかりの輪の人達)と
ちょっとだけ話をする機会があった。
上祐さん曰く、ひかりの輪は特定の人や物を崇拝する宗教ではなくて
思想教室だとのことで、信者といういい方は違うのかもしれないが
そこに集まっている人たちはまじめそうであり、そして、
どこか弱っている印象を受けた。
ひかりの輪は今でも公安から監視の目をうけているが、そこにいる
人たちを見て思ったことは、はっきりいって
「とてもじゃないがこの人たちじゃ、国家転覆は無理」
といったところだった。
みんなとても弱弱しい。
こんなおとなしそうな人たちじゃテロはおろか、デモやストでも
おこせないだろうなと見えた。
頼むからそっと生きさせてくれ、といわんばかりの雰囲気を漂わせていた。
感じとしては週末のカルチャークラブの集まりといったところだろうか。
休憩時間にはお菓子を持ち合って食べながら談笑をしている光景が目に
残っている。
オウムはアレフとひかりの輪に分裂したが、ふたつの団体の大きな
違いは地下鉄サリン事件をはじめとする一連のオウム事件について
教団の犯行だと認めているか、教団以外の存在の犯行だといまだに
信じているかにある。
アレフは今でも麻原信仰を続けており、地下鉄サリン事件は陰謀だと
主張している。
一方で、ひかりの輪は事件は自分たちの団体が起こしたことだと
認めている。
ひかりの輪は上祐さんの下の副代表にHさんという女性がいて、
Hさんともすこしだけ話をしたのだが、穏やかな女性で
とてもじゃないがあの事件を起こしたオウムとは結びつかない
印象だった。
話していて、まさかとは思ったが向こうから地下鉄サリン事件に
ついての話題を振ってきたのだ。
「(地下鉄サリン)事件のときは何歳くらいでした?」
オレは答えた
「まだ学生でしたね。19か二十歳くらいでした
「おどろいたでしょう?」
「はい、おどろきましたね……」
そのときのHさんの表情は本当に申し訳なさそうな顔を
されていた。
思った。
この人は自分自身が関わっていないにしても、あの事件が
自分たちの団体が起こしたことだとしっかり認めている。
アレフの人間は決して自分たちからサリン事件の話をする
ことはないだろう。
オレは人を見抜くプロでもなんでもないが、Hさんをはじめとする
ひかりの輪の人たちは、麻原を信仰しているアレフと本当に決別
したように見えた。
いやいや、ひかりの輪もまだまだ公安がついてまわっている危険な
団体だ。
ケンよ、洗脳されたか、騙されたか、という人もいるかもしれない。
疑い深いオレはそう簡単には洗脳されないし、騙されない。
あくまでメディアの情報だけでなく、自分自身で潜入して見て聴いて
話して感じとった印象である。
それをここで伝えたい。
ひかりの輪の人達について、今でも麻原を信仰しているじゃないかと
疑われるのが嫌ならば、そこで群れず、個人で思想なりヨガなりやれば
いいじゃないかという声も聞こえてくる。
でも、人間て弱いんだ。
だから、オウム真理教にも入ってしまったんじゃないだろうか。
副代表のHさんと話したあとはいよいよ代表の上祐さんとの対話になった。
事件当時、メディアであれだけ露出して、記者や視聴者をけむに巻いた
人物である。
実際目の前にすると独特のオーラがすごかった。
本当はオウムについての質問がしたかったのだが、ついつい圧倒されて
しまい、社会的な価値観についての質問しかできなかった。
どんな質問をしたかというのは当時のアメンバー記事で書かさせてもらった
のでここでは書かないが、オレがしたどんな質問にもすぐ答えが返ってきた
のはやはりかなり頭がいいのだと改めて感じた。
ひとつ感じたのは、元オウムの最高幹部にしては上祐さんは珍しく
麻原に洗脳されていないということ。そして麻原にたいするイエスマンでは
なかったということ。
最高幹部時代、上祐さんはテレビで教団を守るためにいくつもの嘘を
ついた。それは本人も認めている。
ただ、考えるのは嘘をついた理由として、上祐さんが守りたかったのは
教祖である原彰晃ではなく、自分の居場所だったんじゃないかということ。
つまり、オウム真理教という居場所だ。
今、上祐さんは多くの動画チャンネルやロフトプラスワンのイベントとかに
出演している。
そしてオウムや麻原のことについて、どんどん話している。
テロの匂いなど欠片もしない。
もはやタレントの域である。
これはもう麻原思想と完全に決別したどころか、自分の団体の維持費が
稼げるならば、麻原の秘密とかどんどん発信しようという考えではないだろうか。
つまり上祐さんは、もう、オウムではない自分の居場所を完全に見つけた
のである。
だからテロなどは微塵も考えていないだろう。
今考えているのは、ひかりの輪という自分の居場所を守りぬくことだけの
はず。
オウム時代、よく嘘をついていたのは教団を守るため。
麻原が逮捕されたら教団はなくなる。
自分の居場所を守るため、教団を守るために、麻原を擁護するような
ことばかりいっていたととれる。
上祐さんと直接至近距離で向き合って話したけれど、オーラは
感じたが、宗教家としてのカリスマ性は感じなかった。
だから麻原みたいに爆発的にひかりの輪の生徒を増やすことは
きっとできないのではないだろうか。
文化人の宮﨑学も本で書いていた。ひかりの輪に危険性は感じられないと。
オレも実際、上祐さんやひかりの輪の人達に会ってそう感じた。
でも、引き続き公安の監視の元に置くことには賛成だ。
上祐さんは教団の最高幹部時代に嘘をついてきたのは事実。
一般の人からすれば、まだまだ信頼できないだろう。
逆に公安がついていたほうが近隣の住民の人達も安心じゃないだろうか。
結論
上祐さんが今本当に守りたいのは麻原信仰ではなくて、ひかりの輪と
いう自分の居場所。
ひかりの輪の人達も麻原による被害者なのだと思える。
信頼して入った団体の上のほうの人間が人殺しをやっていた。
本人たちも相当なショックを受けたに違いない。
それどころか未だにアレフと同類に思われている。
あくまで個人的な考えだが、ひかりの輪の人たちは、麻原信仰から
抜け出したということはオレは評価していいと思う。
ただ、世間の目はそう甘くはないだろうが、それは仕方ない。
自分の意志でとはいえ、あれだけの大きな事件を起こした教団に
入ってしまった事実はあるのだから。
以上、実際、上祐代表本人とひかりの輪の人たちと会って
見て訊いて感じたことのルポ。
そうそう、youtubeで上祐さんについて画像を検索していたら
TBS系、クレイジージャーニーでもおなじみの危険地帯ジャーナリスト
の丸山ゴンザレス氏が、上祐さんをゲストに迎えてのトークをやって
いて、観てみたら見応えあったので動画を貼りつけておく。
オウムについてたくさん語っていた。
お時間があるときにでもご覧いただきたい。
1動画は約30分。
上祐さん、危険性はもう感じないんだけれど、最近だんだん
露出がバラエティ寄りになっている気がする。
もうちょっとニュースや情報番組系にでて、テロやカルトの
危険性について情報発信したほうが信頼アップにつながる
気もするのだが。
また、オレ個人これからも事件の生き証人的な存在の人がでてくれば
個人的な取材に出向きたいと思う。
偏ったメディアや、まかり通った一般論には惑わされたくない。
極力、自分自身の目で見て、耳で聞いて判断したい。
もっとも恐ろしいのはテロではなく、世の中の偏見とイメージである。
流れてくる情報を外野で信じるのは簡単だ。
だか実際自分の足で確かめにゆくのはパワーと度胸がいる。