羽田圭介「黒冷水」 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

 

 

 

男にたいしてわずかでも幻想を抱いている女性、男の汚い生態をしりたく

ない女性は、今回の記事も紹介する本も読まないほうがいいかもしれない。

 

大学時代に友人がこんなことを話していた。

AVでもでてこないかと思って父親の机だか箪笥だかをアサっていたら、

‘今度生む’がでてきて、「いい年して、まだ夫婦でそういう行為をやっているのか……」

と大ショックを受けたと。

 

まあ、それを聞いたときは「仲がいい証拠だよ」としか声をかけてあげられ

なかったが、自分のやっているアサりという悪行がブーメランになって返ってきて

精神的ダメージを受けたようだ。

 

でも男として、友人がアサりたかった気持ちは正直わからないでもない。

実際にアサるかアサらないかは別として、男ってバカだからそういうアサりたいという

男心を若いころすこしは持っているのである。

 

中学生のときのクラスメートは親戚のお兄さんが家に住み込みで引っ越して

きたとき、そのお兄さんの留守中に部屋をアサって、エロほ……いや、成人雑誌を

発見し、じっくり鑑賞したあと、見た形跡を残さないようにしてもとに戻すのを

繰り返していたと話していた。

 

今でこそネット社会だから、あらゆるところにエロ情報が氾濫していて

入手もしやすいかもしれないが、当時は本でも男子中学生や高校生にとってはいわゆる

お宝だったものである。そういう本を持っている同級生がいたら、みんな蠅のようにそこへ

集まってくる。男って悲しいけどそんな生き物なのである。

 

女性にはわからないかもしれないが、男子はみな通ってきた道だと思う。

そんでもって、そういう本を隠す場所もだいたい相場が決まっている。

中学のときの友人Yはベッドのマットの下に挟むように隠していた(笑)。

 

羽田圭介が17歳のときに書いて、雑誌の文学賞を受賞した「黒冷水」は

成人雑誌やAVなどのエロを見つけることが目的で兄の部屋を執拗にアサる弟と、そんな弟に

気づかないふりをして罠にかける兄弟のバトルの話である。

 

――

兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。

兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?

出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、

選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。

(amazonから引用)

 

 

最初、羽田圭介がこの話を17歳で書いたと聞いたとき、すごいなと思ったが、よく考えたら

まだ大人といえない高校生だったからこその感性で書けたのかなと思った。

 

いやあ、この話はリアル。

リアルで生々しい。だからこそ男性にはイタイかもしれない。

なんか男性視線で見てもすごく気持ちわるいヌル湯に浸かっているような不快感がある。

もっとも話の内容的に読者を不快にさせたら作品として大成功であるが。

 

ある意味でこの小説は男子中学生、高校生のあるあるの集大成かもしれない。

そのころの男子のエロにたいする執念執着ってすごいから、実際にこの話の弟みたいに

兄弟の部屋や机をアサっている人っているかもしれない。いや、きっといる。

現に中学校のときの同級生は親戚のお兄さんの部屋をアサっていたし。

 

アサりというマニアックなテーマにして文藝賞を受賞したのは、やはり選考する人の

共感というか納得を得たからだろう。

 

でもアサりに限らず、人のスマホやメールを勝手に見たりするような行為もよくない。

それを趣味のようにやってて、陰でめちゃくちゃ嫌われてた人間をしっている。

 

そういえば芸能人の不倫のニュースがあると決まって、LINEのやりとりが報道されるが、

あれっていったい誰がリークしているのだろうか。

 

不倫は肯定しないけれど、たとえ不倫であってもLINEのやりとりというのは個人間でも

ものだから、それを公表するというのは個人的には反対である。

 

でもやりとりしているどちらかが出さないかぎり、基本的に公表されないはずなので

やはりどっかで情報を盗んだり撮影したりする第3者が公表したのだろうか。

不思議だ。あれだけは誰がリークしているのか不思議だ。