湯の花天女(番外編) 大塚温泉 金井旅館 | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

四万温泉から帰る日に立ち寄った温泉の記録。

 

10年ほど前にはじめてひとり旅にいったときは、時間の組み立て方が

わからずにチェックアウト時間からバス、電車ともに最速の時刻表で帰ったら

昼過ぎには日常の自分の部屋についてしまい、せっかくの旅の余韻が

無くなってしまった。

 

旅から帰る日はどうせなら暗くなってから家に着きたい。

そう考え、今回も2日目に四万をでたあと、どこか温泉に寄ろうと考えていた。

 

とはいえ、吾妻線沿線で歩いてゆけるところはもうかなりいってしまっている。

祖母島の根古屋城、金島の富貴の湯、八木原のスカイテルメなど既にクリア。

 

どうせならまだいったことがない温泉で、寄って戻って帰宅してちょうど夜になる

ところがいいと思い、一カ所考えた。

 

中之条駅から四万と反対方向に車で15分くらいのところにある「大塚温泉」。

ここはまだいっていない。

理由として交通機関がほとんどないのがひとつ。

もうひとつは追って。

 

駅からバスもでているにはでているらしいが、とにかく本数が少ない。

 

そこで出発前に地図で改めて場所を確認してみた。

駅から遠い。たしかに遠い。

 

だが……

地図上での「㎝」を「キロメートル」に変換し、ボンヤリと距離計算してみたら

オレの気力と忍耐力で歩ける「射程距離内」には位置していると判断。

 

四万チェックアウト後にバスに乗り、駅到着が11時。

11時から長くて1時間前後歩いて正午温泉到着。

温泉滞在1時間で午後1時。

そこから歩いて駅まで戻って1時間で午後2時。

途中迷ったり休んだりする保険に時間を1時間設ける。

午後3時に吾妻線に乗って、鈍行乗り継いで帰れば帰宅は19時前。

 

時間配分としても運動としてもベストではないか。

ということでそれに決定。

バスで中之条駅まで戻ったら徒歩で大塚温泉を目指すことに。

 

過去の根古屋城温泉であった経験をふまえて、ついてみたら臨時休業だった

という悲劇だけは回避するために、駅から一度立ち寄り湯営業確認の電話を

いれる。

 

女性の方がでて対応していただき、営業の確認はとれた。

「ちなみに中之条から歩きだと1時間くらいでゆけますかね?」と訊ねてみたら

予想通りに「え!? 歩きですか!」と返ってきた。

 

「いや~、今まで歩きで来たって人は聞いたことないんで……」

「1時間じゃ着かないかと思いますよ。バス停からもいくらか奥なんで」

とのこと。

 

そこでひとこと丁寧にお礼をいって電話を切った。

 

これまで(知っている限り)誰も歩きできたことがないのであれば、

オレがそのひとりめになればいいだけの話である(笑)

よし、ゆこう。

目標タイムリミットは1時間半以内だ。

 

まずは駅前から東へ。途中曲がってそのままずっと北上。

 

実はこれから目指す大塚温泉は「ぬる湯」がメイン。

なので、それなりに歩いて体が熱くなったほうが気持ちいいだろうという考えもあり

徒歩を決めた。

 

とはいえ、道のずっと先まで見えている光景というのはやや心が折れる。

果たしてオレの選択は正しかったのだろうか?と何度か揺らいだ。

 

 

おい、てか……

この道はアレじゃないか?

映画「フォレスト・ガンプ」の中でトム・ハンクス演じるガンプが大衆を引き連れて

マラソンで走って行ったどこまでも伸びる道ではないのか??

歩くのは嫌いじゃないが飽きるには飽きる。

途中、史跡みたいなスポットもあるが時間が読めないので行きに寄るのは危険だ。

 

大雑把な地図と現在地を見比べて40分くらい歩いたら、それらしき脇道が見えたので

入る。

長閑な風景。

 

近くにあるお店。

今の居酒屋のレイアウトによくあるレプリカレトロじゃない。

おそらくガチのレアレトロ看板だ。

うーむ、ファンタスティック。

 

 

お、訪問したことのある人のサイトでよく見かける立て看板発見。

もうそう遠くはない。

 

 

しかし、ここからが民家の合間の分かれ道をゆくちょっとした迷路。

あさま山荘への山道を思いだす。

 

これまでの情報を思いだせ。

そうだ、訪問した人のブログではたしか宿の前には田園風景が広がっていた。

だから民家がまだまだ密集しているこんなエリアではないはず。

もっともっと奥だ。

 

記憶と自分の勘を頼りに坂道をのぼってゆくと、ずっと先にそれらしき施設を

発見。

あれだ。間違いない。

よかった。

 

 

 

所要時間1時間を切る快挙。

 

 

『大塚温泉 金井旅館』

 

入口はこんな感じ。

 

 

外観的には限りなく大きな民家だがとても有名な温泉である。

宿泊客の多くは地元の人でとても愛されている。

比較的最近、宿も温泉もリニューアルしたようなので、オレはその後として

初訪問である。

 

フロント。

誰もいない。

 

 

すいませーん、と呼ぶと奥から貫禄ありながらも人のとても良さそうなご主人が

登場。

立ち寄りをお願いしますといい千円渡すと「はい、2時間ね」といい、奥にお釣りを

取りにいってくれた。

 

「中之条から歩いてきましたよ!」とオレがいうと、「それはお疲れさま」とか

じゃなくて「健康のため!?」という言葉が迷うことなくすぐに返ってきた。

うわ、オレ、このご主人のキャラ、すげえ好きかもしれない。

聞いた瞬間そう思った。

 

建物奥へ進むとロッカーがあった。

ここでスマホと財布を預ける。

 

ちなみに、今は浴室撮影NGの温泉が増えていて、見た限り撮影禁止の類の紙は

見かけなかったのだが、念のため一応画像はナシにしておく。

撮影できないかもということと、盗難防止のためにスマホは入浴前にロッカーに

入れてしまった。

※あがってから誰もいない状態のとき外から1枚だけ撮影させていただいたので

撮影問題ないことわかれば追加でアップするかもしれない。

 

内湯は3か所。

通常の温度、熱い温度、ぬる湯の3つ。

 

この時季は通常のが一番気持ちよかった。

 

メインの「ぬる湯」はプールのような露天。

随分歩いてきたとはいえ、まだまだ空気は冷たい。

噂通り、ほんとにヌルかった。

 

※追加アップ

 

 

 

温泉の注ぎ口近くにいったら多少温かさを感じる。

 

いくらか我慢してじっくり浸かっていたら、たしかに体の芯から不思議とジワジワ

温まってくるのがわかった。

遠くにある山が良く見渡せる。

 

寒かったので内湯中心に1時間ほど浸かり、電車にはまだ早いけれどいろいろ

あってあがることにした。

 

靴を履いて玄関をでたらそこでまたご主人と遭遇

「あれ? 早いね? もういいの?」

と優しく声を掛けていただく。

 

良いお湯だったことと、ひとことのお礼をいったあと周辺の写真を数枚撮影し

金井旅館をあとにしようとしたら、ご主人がちょうど車に乗り込んでどこかへ

出かけるところだった。

 

運転席からオレを見ると、片手をさっとあげて挨拶しそのまま走っていった。

 

やはりオレはこのご主人が好きだ。

事務的でもなく、不愛想でもない。

社交辞令でもない。

これこそ本当のアットホームで「田舎に帰ってきた感覚」である。

 

宿の中もとても綺麗だった。

もうちょっと寝苦しくなった季節に今度は泊まりでこよう。ぬる湯に浸かりに。

 

午後1時過ぎ出発。

15時の電車には十分余裕があるので、帰りはゆっくりだ。

 

行きに歩いたとき、やや気になった史跡?にも立ち寄れた。

 

「桃瀬の水牢」跡。

 

 

昔、拷問の1種の水責めがおこなわれた場所の跡のようだった。

 

一応見てはきたけど、画的に地味だったので画像は省略(笑)

 

 

下は「吾妻神社」

 

 

すごい。

ここまで赤と黄色の組み合わせがくっきり鮮やかなモノはヤッターマンに

登場する「ヤッターメカ」とこの鳥居くらいかもしれない。

 

とくにシメ縄のあたりが力士のマワシっぽいので「ヤッターヨコヅナ」を連想してしまう。

ボディガリガリなのになぜかヨコヅナのヤッターヨコヅナ。

しらない人はどうぞ画像検索を(笑)

 

 

 

14時過ぎ、中之条駅に戻ってきた。

待合室で本を読みながら到着まで1時間ほど待つ。

 

こういう土地へ来ると、バスや電車の本数が限られるせいか、観光客の行動パターンも

自然と似てくるようであり、前日高崎駅から乗り込んできてひとつあけオレの隣りに座った

若い女の子ふたり組ともまたここで一緒になった。

 

やがてやってきた電車に乗り込んでロングシートに座ると、行き同様その女の子たちも

またまたひとつ空けてオレの隣りに座った。

 

「ああ、行きも同じ車両ですぐそばに座って帰りも同じだ」とぼんやり考えながら

高崎駅に到着、湘南新宿ラインに乗り換えるためにホームを移り待っていたら、

なんとまたオレと同じとこにきた。

 

行きはたまたま高崎から同じになったというだけで、もっと前の時点から流れは同じだった

ようだ。

 

結局オレのほうは大宮で降りて乗り換え、その子たちはその先まで乗っていったようだけど

行きの高崎から中之条、そして帰りは中之条から埼玉の大宮までずっと同じ車両ですぐそばに座る

という偶然もまた不思議な感覚だった。

 

交通機関の本数が少ない地方に一泊旅行へゆくと、稀にこういうことがある。

微妙に気まずかったり(笑)

 

さて。

ということでリフレッシュして東京に戻ってきたつもりなのだけれど人の世は実に理不尽な

モノであって、日常に戻ったら戻ったで、そのリセットしてきた気持ちをリセットしてくるような

人間も残念ながらいるのである。

ヒットポイントをやっとこさっとこ10回復して戻ってきた矢先に、15のダメージを与えてくるような。

 

いろんな意味で決して余裕があるわけじゃないけれど、もしかしたらまた、もう一度

どこかに休みにいってくるかもしれない。