かつて「一杯のかけそば」という話が世間で大きく話題になった。
テレビや雑誌などで大まかな内容を聞いただけだから多少違う
部分もあるかもしれないし、ネットの情報も必ず正しいというわけでは
ないからwiki含むサイトでも改めて詳細は確認しないが、
たしか貧しい家族がそば屋にいって、一番質素なかけそばを一杯だけ
頼んでそれをわけあって食べるというようなエピソードだったと思った。
当初は実話というふれこみで拡散し、例によって日本中が涙の洪水?と
なったようにメディアが騒いでいて、それをそのまま受け止めるように
周囲の友人もいくらか泣いたと語っていた。
だが――
のちにそれが実は作り話であり、実話じゃなかったということが報道された。
それまで「感動した!」といっていた人たちが急に怒りだした。
あれだけ感動したのに実話じゃないなんて!と。
作り話を実話だといったのだから、詐欺的な要素はたしかにある。
偽った作者の姿勢にたいして怒るのは納得ゆく。
でも、‘実話じゃないのならば、私の感動の涙をご返却ください’というような
怒りはどうなのかなあと、やや疑問。
その人は実話という前提がなければ感動しないのだろうか。
実話だろうが作り話だろうが、その人本人が感動したのであれば、それで
いいんじゃないかとも思える。
ピカソやダリが描いたという芸術絵画を購入した人が、あとになってそれが
ニセモノだとしった際に怒ることになんとなく似ている。
その絵を見た時に純粋にいいと思って、これだけの金を出して買う価値がある
と自分で判断したのであれば、ピカソが描いてようが隣りにすむオッサンが描いて
いようがいいはずである。
ピカソが描いた絵画だと思ったから買ったのであれば、それは「絵画の価値」に
対価を支払ったのではなく、「ピカソが作者」という付加価値に対価を支払った
ことなのである。
「一杯のかけそば」において涙をダーっと流したあと、作り話だとしった瞬間一転して
怒りだす人はきっと、「感動」に涙を支払ったのではなく、「実話」という付加価値に
涙を支払ったのかなとも思った。
このブログだからあえて斜めから書いたが、今これを読んでいる人で該当する人が
いたら、ごめんなさい(笑) ←ちょっと怖くなった人
こういうと、あとづけでいってるように聞こえるかもしれないが、オレはあの
「一杯のかけそば」について、題名と概要を聞いたときに、あまりピンと来なかった。
それって、本当に実話なの? という感覚だった。
ウソ臭いと思ったわけじゃない。
むしろ逆。
実話として送りだす出す感動エピソードにしても、お涙頂戴のウソ話にしても、
どちらにせよ、「一杯のかけそばを家族でわけあう」というその設定が感動話として
世に贈るにしてはあまりにも日常に近く‘弱すぎる’から不自然だと感じた。
昔から涙もろいほうで、自分が実際にそば屋にいったとき、貧しい家族がそのように
一杯をわけあって食べている場面に遭遇したら、間違いなくホロリと来るだろうが、
活字で読んだり、人から聞いたりするぶんには世界観がいまいち弱くて、泣けない。
なので、オレは当時もあまり関心を寄せなかったのだが、想像以上に世間は
かけそばフィーバーだった。
そうそう、かけそばといえば、先日「富士そば」にいった。
おそらく人生初。
もしかしたら、もうかなり前に営業中一度だけいったことがあるかもしれないが、
ほとんど記憶にないから初も同然。
正式名称は「名代 富士そば」。
冠についているこの‘名代’っていうやつ。
以前から老舗のラーメン屋の看板でもたまに見かけていた。
長い間、「めいだい」か「みょうだい」のどちらかの呼び方だと思いこんで
いたが、つい数年前に、そのまま単純に「なだい」と読むことをしった。
発想力における灯台もと暗し。
本来とても単純なものであっても、人間はなぜかあえて難しいほうに
捉えてしまうものよのう。
それと富士そばって24時間営業なんだな。
理由として、家賃を払っているわけだから夜間テナントを遊ばせるのはもったい
ないということがひとつ。
もうひとつは、社長が昔夜中に入る店がなくて困ったことがヒントになった
ようである。
「かけそば」 300円
オレの想い出のかけそばといえば、かつて国分寺駅の駅舎のすぐ横に
あった立ち食いそばのかけそば。
再開発で今はもうない。
子供のころ、友達と西武球場に野球を観に行った帰りに、そこで並んで
よく食べていた。
当時のかけそばは180円。
小学生のおこずかいでも十分食べることができたし、とても美味かった。
そんなかけそばも時代とともに値上がり、今では安くて300円が相場だが
富士そばのかけそばは美味くてそれなりに量もあり、これで300円ならば
けっこうオトクかなとは感じた。
最近そばが食いたくなることが多い。
とくにBSやテレ東の旅番組の舞台が長野だったりするとそば欲がもうタマらん。

