未解決 世田谷一家四人殺害事件現場をゆく (前編) | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

自分の娘に対する虐待、幼女連れ去り殺害、紀州のドンファン……

ここ最近だけで聞くのもつらくなるニュースや、奇妙なニュースが多くて

どの事件がどの場所であったのかが混乱してくる。

そして昨日今日では東海道新幹線内での無差別殺傷事件。

 

人はどうして人を殺すのか。

 

単純なようでとても深い闇。

発生当時はかなり衝撃的だったにもかかわらず、また次の残虐事件が

おこると、世間の関心は上書き更新される。そして過去の残虐史は静かに風化してゆく。

 

先日8日で、あの秋葉原無事件からちょうど十年経ったとのこと。

同日、児童8人が亡くなった池田小襲撃事件からもちょうど十七年経ったらしい。

発生した年は異なるとはいえ、同じ月日に類似する事件がおこっていたという

のはなにかの因縁だろうか。

 

もう何年も前に購入して読んで棚の上においてあった

「殺人現場を歩く」

という本を久々なんとなく手にとって開いてみた。

 

 

 

あの世田谷一家四人殺害事件現場のことも当然書かれていた。

改めてよく見ると表紙の一軒家もその現場だ。

 

この事件にかんしても発生からかなり時間が経過しており、警察による情報提供を求めるサイトも

つい最近更新されたとかいうことだ。

 

2000年12月31日午前中。

会社員のМさん一家4人が血まみれで倒れているのが発見された。

その時全員が既に絶命。

犯人はいまだに逮捕されておらず、時間だけがかなり経過してしまっているあの酷い事件だ

 

本を改めて読んでみると昔はあまり意識していなかったことに気づく。

 

事件現場は世田谷区とのことだったので、オレの家からはかなり遠いという印象だった。

だが、世田谷区といっても広い。そしてその西側は調布市に隣接している。

 

書かれていることを確認すると、現場は京王線の仙川駅(調布市)からもさほど離れていない

世田谷区の端にあるようだった。

 

土地鑑や距離感は身につけている。

「自転車で1時間もあれば簡単にゆける距離じゃないか」

そう思った。

 

あれだけの大きな事件で、まだ解決もされていない。

現場の空気をしっておきたい。

犯行現場付近は今どんな状況なのか気になり、先日家から世田谷区の事件現場まで

個人的な取材もかねて自転車を走らせた。

 

行きのルートとしては、まず調布駅から数駅先の仙川駅まで。

甲州街道をひたすら東へ走ればいい。

 

途中、飛田給駅にある味の素スタジアムの前を通過。

例によって、ゆきがけのジャーナリズムはしっかり拾うのがオレの主義。

味の素スタジアムに隣接しているアミノバイタルフィールドの様子も見てみる。

あの日大の悪質タックルがあった現場のフィールドである。

 

 

今回のメインはここじゃないので、この1枚だけ撮影したら先を目指す。

 

家をでて40分くらいで仙川駅前まで到着した。

 

過去に数回駅前を歩いたことがある。

かなり栄えていて商店街も賑わっており、まだここは調布市であるにもかかわらず

世田谷区の空気のほうが強く感じられる。

 

 

駅からは一度南下して、途中118号に突き当たったらあとはそこを世田谷方面に

向かえばすぐということは調べたが、詳しいルートは不明だ。

 

とにかく駅前の道を南へ走ってみたのだが、118号が見当たらない。

微妙に迷ってしまった。

 

改めて調べないといけないのだが、できるだけスマホはいじりたくない。

交通違反者を見張っているのだろうか、歩道の影に若い警察官がいたので、せっかく

だから訊いてみた。

 

「ちょっと訊きたいんですけど、118号に突き当たるにはどういけばいいですか?」

と訊くと、彼もよくわからないようで腰のケースから自分のスマホを取りだして地図の

アプリを開きいて調べてくれた。

が、結果よくわからないようで、なんとなくわかりましたとだけ答えてその場をあとにした。

向こうも「すいませんね。うやむやで」と申し訳なさそうだ。

 

彼を責めるつもりはまったくないが、昔から思うのは、街を彷徨っていて行く先が

わからず、たまたま見つけたお巡りさんにきいたら、すぐさま口頭で教えてくれるという

シチュエーションはサザエさんなどの昭和アニメの中の警察官だけであるということだ。

現実の警察官は住所関係がそこまでインプットされていない。

 

とにかく細かい横道が多くてまだ118号までどういけばいいのかわからないが、

迷っている時間がもったいない。

 

しょうがない。

さっき通ってきた仙川駅前に交番があったから、そこまで戻って訊くことにした。

 

 

中に入ると、年輩の交通相談員の人が今度はすぐに118号までの行き方を

教えてくれた。

 

事件があった一軒家の住所もメモはしてあるからわかるが、あえて現場までの

道順は訊かず118号までの行き方だけ訊ねる。

 

現場への行き方まで訊いたほうがすべてにおいて確実だとはわかっているが、

警察もその住所でピンとくるだろう。

「ははん、ヤジウマ根性まるだしの事件マニアが現場を見にゆくつもりだな」

と軽く思われるのは本意じゃない。

だから、あくまでその‘周辺’まで。

あとは自力で探す。

 

オレはこれまでも事件現場などのダークなところに足を向けたりしてきた経験があるが

迷いそうになったらあえて交番で訊く。

そこで‘足あと’をつけておくことが、もしかしたらあとあとの保険になるかもと考えている。

 

いざ、そういった現場周辺まで辿りついても正確な場所が見つからず、探し回ることで

同じ場所を何度も行き来する流れも考えられる。

 

そんな様子をたまたま巡回していた警察官に見れらたら、空き巣に入る家を物色している

とかいう感じで怪しまれるかもしれない。

 

まだそんな状況に遭遇したことはないが、もしそこで止められてこのヘンでなにウロウロしてる

んだ?と訊かれたら、そこは「○○の現場を探してまして」と正直に答える。

 

もしそこで信じてもらえなかった場合、

「さっき、○○の交番でこの周辺までの行き方を訊きに立ち寄りました。

これから空き巣をやろうとする人間がその目的の土地までの行き方をわざわざ交番で

訊くようなリスクを犯すと思いますか?なんなら○○交番に訊いてみてください」

といえば信じてもらるえんじゃないか、と勝手に想像している。

そういう意味での保険的な足あとづけだ。

考え過ぎだろうか。

 

交番で訊いた限り、ここまでくればあとはもうすぐ世田谷区に入れるらしい。

 

ひとことお礼をいい、交番をあとにする。

 

さっき走った駅前の道をふたたび南下し、ホームセンターにつきあたったところで左折。

 

小さくいびつな十字路を渡り、そのまま直進すると細い道へと入った。

ここが世田谷区へ続いているとは想像しにくいような細い道路だ。

交番で訊いておいてよかった。

 

ささやかで小さな商店街を走ってゆくと、細い道はさりげなく世田谷区へとつながった。

 

 

さらに自転車を走らせる。

周囲は閑静な住宅街。その中に個人商店が点々と佇んでいる。

 

すこし行くと下り坂にさしかかった。

自転車でくだると、右側に神社がある。

 

坂を下り終えると、目の前には仙川が流れていた。

その上に架かる小さな橋を渡ると、左側には駒大のグラウンドが広がっていた。

 

ここが上祖師谷3丁目。

情報によれば現場はもうこのあたりのはず。

 

グラウンドと反対の右側には緑が茂った公園が広がっていた。

人はいるが雰囲気的には長閑で平和で地域によくあるような公園だ。

 

だけど……

 

なにか感じるのだ。

その公園から――

 

いや、厳密にいえばその公園の奥の方から――。

 

そう、視線。

 

だけど、人間じゃない。

人間じゃないなにかの視線――

 

その時いた場所から右側にあった公園の中を貫くようして自分の視線を遠くへ投げる。

 

公園の奥の突き当りにあるフェンス。

そのフェンスの向こう側に見えたのはブルーシートで覆われた一軒屋だった。

 

視線を送って来た正体は人間じゃなくて、その家そのもの。そんな奇妙な感覚。

 

やはりそういう場所にはそういう場所なりの特有な波長や視線というものが発生して、関心を

持ってやってきたものに向けて発信するなにかがあるような空気を感じてしまう。

 

そうだ。

間違いない。

 

あれが――

 

現場だ。

 

 

 

 

ルポは後編へ続く。