僕は大型百貨店で迷子になっちまった
求めているモノを探して店内を歩いているうちに
一階にはたくさんの靴が売っている
ニューバランスのスニーカー リーガルのローファー レッドウィングのエンジニアブーツ
だけど僕が探しているのはそんな靴じゃない
この惑星(ほし)の上をどれだけ渡り歩いても、決して他人の人生を踏みつけない靴だ
それを買って、あの人に贈りたい
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
求めているモノを探して店内を歩いているうちに
四階にはオシャレなインテリア家具がたくさん売っている
ヨーロッパ調のライト 北欧風の帽子掛け 職人がデザインした傘立て
だけど僕が探しているのはそんな実用品じゃない
過去や憎しみを捨てることが出来るゴミ箱だ
それを買って、自分で使いたい
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
求めているモノを探して店内を歩いているうちに
最上階のレストラン街には、たくさんの食べ物屋が並んでいる
高級寿司店 有名とんかつ店 行列スイーツ店
だけど僕が食べたいものはそんなもんじゃない
僕が食べたいモノ それは…………
それは、そう……×××
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
迷っているうちにいつの間にか屋上にきちまった
探しているものは何もみつけられなかった
だけど、フェンスの向こう側にひとつだけ、あるモノを見つけることが出来た
それはこの世からの非常口
もう、一階まで降りる気力もないから
僕はエレベーターも エスカレーターも 階段も使わずに 下まで降りようか
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
僕は大型百貨店で迷子になっちまった
アスファルトの上に 深紅の花が一瞬で咲く
明日の朝刊 社会面の片隅 僕の名前が小さい花のようにひっそりと咲く
La・La・La …… だけど数日経ったら、すぐに忘れられちゃうんだよ
<短編自作ノワール・番外編 /散文アレンジ社会風刺Ver〉
(刺激強め注意)