小坂流加さんの『余命10年』を読みました。

 

 


高林茉莉は、20歳の時に難病に罹った。
治療薬は見つかっておらず、10年以上生きた患者は存在しない。
残された10年を好きなことにつぎ込んでいくうちに、死の恐怖から少しずつ逃れられるようになるが、30歳までしか生きられないという足かせが、茉莉を縛り付ける。



2022年に映画化されたことと、タイトルに惹かれて手に取ったのですが、非常に面白い作品でした。
もし、1日の24時間を好きなように使っても良いと言われれば、寝る時間以外はこの作品を読むことにつぎ込みたいと思ったほど。

――あと10年しか生きられないとしたら、あなたは何をしますか。
長いと思い悠然と構えられますか。短いと思いかけ出しますか。――(本文より)

この10年というのが絶妙。
上の文章にもあるように、「10年も」と考えるのか「10年しか」と考えるのか…
自分が生きた証を残せる時間はあるものの、恋だとか結婚だとかといったことには二の足を踏んでしまう。

この作品では、ほとんどの時間、茉莉は充実した時間を過ごしていて、とてもポジティブ。
でも、時折余命が頭をよぎってしまう、そんな生活を送っています。
なので、話が重くなりすぎず、楽な気持ちで読み進めることができます。

自分だったらどうするだろうなぁと考えると、茉莉のように充実した生活はおくれなさそうな気がしてなりません。

終盤は、どこで泣いてしまうんだろうなぁと思いながら読んでいたのですが、意外とあっさりと。
涙腺崩壊とはいかずに読了することができました。

ちなみに、作者の小坂流加さんですが、難病の原発性肺高血圧症で、38歳で亡くなられたそうです。
自らを茉莉に投影していたのかな?と思うと、また泣けてきそうになってしまいます。
自らの病気があったので、ポジティブな作品になったのかな?と思うと、また胸にこみ上げるものが…

不治の病というものを扱っていながら、多くの部分をポジティブな気持ちで読むことができますので、気軽に手に取っていただけるのではないかと思います。
オススメ!

 

 

 

 

 


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