森博嗣さんの『幻惑の死と使途』を読みました。

 

 


脱出マジックを得意とする有里匠幻が、屋外ステージでの脱出マジックの最中、ステージの上で胸をナイフで刺されて殺害された。
犯人はどこから現れて、どこへ消えたのか、警察は途方に暮れる。
さらに、告別式のあと、霊柩車に乗せられた棺の中から、匠幻の遺体が消滅する。
匠幻は葬儀の最後に、「諸君が私の名前を叫べば、どんな密室からも抜け出して見せよう」と、事前に録画したビデオを流していた。


まず驚いたのが目次。
このシリーズは、目次に手の込んだ仕事がされていることが多いので、目次にもしっかりと目を通すようにしているのですが、なんと、章番号が奇数のみなのです!どれくらいの方が気づかれたでしょうか?
奇数というのは不思議な数字で、奇数と偶数を足さないと奇数にならないし、奇数同士をかけてやらないと奇数になりません。
また、「奇」は、マジックを示す「奇術」の「奇」でもあります。
さらによく見てみると、章タイトルがすべて「奇」からはじまっている手の込みようです。

これもシリーズ全般にわたって言えることなのですが、タイトルが秀逸。
『幻惑の死と使途』という、一見意味不明の文字遊びのようなタイトルなのですが、作品を読み終わってから見直すと、深ーい意味が込められていることに気づきます。

また、解説を2代目引田天功さんが書かれているのにもビックリ。
引田天功さんが書かれた文章を目にするのは、おそらくこれが始めてではないでしょうか。
そういう意味でも、貴重な体験をさせていただきました。

私にとって、この作品は早く読みたくて読みたくて仕方のなかった作品でした。
(既刊なのですぐに読めば良い話なのですが…)
何が気になっていたかというと、前作『封印再度』で、萌絵の叔母・睦子預かりになっていた書類の行方。
なるほど、そういうステータスにあるのかと、納得したような、宙ぶらりんのような…

今回の作品のトリックですが、謎解きを読んでしまうと、「ア・ン・フェ・ア」という文字が頭をよぎってしまいます。
しかし、舞台はマジックの舞台の上。
タネも仕掛けもあるのは当たり前で、騙される方が悪いと言えなくもありません。

最後に犀川が示した可能性については、なかなか興味深く、面白い説だなぁと、思わず唸ってしまいました。

 

 

 

 

 

 

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