私が中学生の頃から好きな作家、J.アーチャーの作品『永遠に残るは-クリフトン年代記 第7部-』を読みました。
この作品は2011年(日本では2013年)に発表された『時のみぞ知るークリフトン年代記第1部ー』から数えて7作目。そして5年にわたって書き続けられた「クリフトン年代記」の最終作となります。各部上下2巻ずつでしたので計14冊。ともすれば本棚1段が埋まってしまいかねないボリュームです。
作者のJ.アーチャーは70歳を超えるご高齢なので、作家人生の締めくくりとしてこの一連の作品を書かれているのではないかと心配していたのですが、本国イギリスでは既に次の短編集を発表されているのだとか。相変わらずエネルギッシュなJ.アーチャーには恐れ入りました。

さて、このクリフトン年代記ですが、物語は港湾労働者の息子ハリーと、その港湾会社社長のジャイルズとその妹エマの3人を中心に進められていきます。

各主要人物の目線で物語は書き進められていくのですが、波乱万丈の人生を歩んでいくのはJ.アーチャーが"サーガ"と読んでいる主人公の生涯を描く長編小説ではお約束。ただ、今回は7部にわたる大長編ということもありスケールが違います。恐らく物語の中のハリーたちの年齢はJ.アーチャーと近い年代になると思うのですが、時代考証はしっかりされていますし、史実を巧みに織り交ぜながら書き進めていく巧みさにはいつものことながら舌を巻きます。
また、議会でのシーンは実際に庶民院(下院)、貴族院(上院)を勤めただけあってリアルですし、寄宿制学校の描写や法廷でのシーンも相変わらず見事です。刑務所内の様子がリアルなのは実際に収監されたことがあるからでしょうか…(転んでもただでは起きないのがこの人の魅力の1つだったり)

この第7部の下巻にきて、この年代記を通して悪女として描かれているはずの女性になぜか感情移入。これもJ.アーチャーのテクニックなのでしょうか。

そして物語の最終盤、これまでの波乱万丈っぷりはどこへやら、皆が幸せを掴んでこのまま平穏無事に終わってしまうのかと思いきや、そうは問屋が卸さないのがJ.アーチャー。急展開を迎えることになります。
"幸せとは何か"ということを問われているようにも思えましたが…

 

 

 

 

 

 

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