S.B.のちょっと怖い話⑪
昔、俺がまだ東京に居た頃の話。
その日もやっぱり徹夜でさ。ようやく家に帰って来てさ。落ち着いてチャーハンとライスを食ってたらさ、チャイムが鳴るんだ。
午前四時に訪ねて来るなんて非常識だなあと若干苛々しながら玄関に向かったんだけどさ。
ふと背筋に嫌な予感が走ったんだよね。
ゾクッと。
これはー、もしかしたらー…とか思いながら覗き穴から見てみたら、居るんだよ!
角刈りが!
「兄貴、あんたは男の中の男だ!」
「ちょ、ちょっと!誰ですか!?こんな夜中に非常識ですよ!」
「違うんだ!とにかくここを開けてくれ!」
あ、まずい!チェーンロック忘れてる!
激しくドアを揺らす角刈り。
「あ、兄貴と呼んでもいいですかい?」
「いやいや!警察呼びますよ!」
「お願いだよ。兄貴!」
「うおおお!やばい!」
ドアを突破され、俺は3m以上吹き飛ばされた。
「なんちゅう馬鹿力だ。」
顔を上げると奴の姿が無い?
「消えた…?」
と思った瞬間右耳に違和感を覚えた。
「コリッ」
「あーーーーーー!!」
…はっ!夢か。
良かった…。
目が覚めた部屋には心地よい朝の日差しが降り注ぎ、マンダムの臭いで満たされて、それはまるで神々でさえも立ち入る事が出来ない聖域の様だった。