金助連続小説② | MY SONG IS BAD

金助連続小説②

タイトル:サンダーボルト

俺は決してハードパンチャーではない。

しかし1RKO率は100%。

俺のパンチは意識を刈る。

—脱力—

力みと弛み、その振り幅が大きい程に比例して打撃力が上がるのをご存知だろうか?

有名整体師が世界的なグレイティストであるモハ〇ド・アリを施術した際に、その筋肉はマリリン・モ〇ローの体のように柔らかかったと語っている。

古代パンクラシオンから続く強さへの研鑽は筋肉への信仰と否定を繰り返す。

そして辿り着いた結論。

それがこの打撃だ。

ギリギリまで脱力をし、インパクトの瞬間に全力を込める。

俺はボクサーではない。

「拳術家」だ。

ゆくゆくは総合、日常、あらゆる局面における武を完成させる。

前置きが長くなってしまったが、ゴングが鳴ってからの俺の仕事は決まっている。

まずは相手の懐に入るところからだ。

近付けまいとチャンピオンの散弾銃の様なジャブが襲う。

熟練され見事ではある、が全てコマ送りのように見える。

俺はコーチから丸めた新聞の記事を投げられ、その内容が読めるようになるまで繰り返し訓練を受けたのだ。

この動体視力を持ってして人間の動きで見えないものはおそらくない。

巧みなヘッドスリップを繰り返し懐へゴール。

この動きはよく記者は、

「雷が走る」

と例える。

そして懐に入るやいなや、カミソリの様なジャブを相手の下顎の先(チン)ギリギリに当てる。

すると何が起きるか。

相手の脳はピンボールの様に頭蓋骨に何度もぶつかる。

脳震盪だ。

そこにダメ押しのチョッピングライトを再び下顎の先(チン)へ。

この一連を「落雷」と俺は呼ぶ。

『決まった…呆気ないものだ』

雷に打たれたチャンピオンはこれまでの対戦相手同様、まるで糸が切れた操り人形のようにそのままストンと崩れ落ち…









ない!?

チャンピオンは倒れそうになると、これまでの対戦相手への「想い」が踏み止まらせると聞くがまさにそれか。

倒れないどころか反撃に出るチャンピオン。

だが問題ない。

この動体視力は全てお見通しだ。

チャンピオンの左ストレートにジョルトで合わせる。

それで今度こそ終わりだ。

—つづく—