法20条2項2号の意義と解釈

 

▶令和4年11月25日東京地方裁判所[令和3(ヨ)22075]

(1) 著作権法20条2項2号の「増築」及び「模様替え」は、建築基準法において用いられる用語ではあるものの、著作権法及び建築基準法のいずれにも定義規定がないことからすると、これらの用語の一般的な意味を考慮しつつ、両法に整合的に解釈するのが相当である。

この点、「増築」とは、一般的に、在来の建物に更に増し加えて建てることをいい、建築基準法6条2項等においてもこのような意味で理解することができる。また、「模様替え」とは、一般的に、室内の装飾、家具の配置等を変えることをいうが、同法2条15号、6条1項等からすると、建造物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲で、これを改変することをいうと解すべきである。そして、これらの解釈は、著作権法20条1項、2項2号の趣旨に反するものではない。

そうすると、本件工事1(1)は、前記のとおり、版画美術館の西側の池や1階西側及び2階西側の壁等を撤去し、エレベーター棟を建設して、これを版画美術館に接続するものであるから、在来の建物に更に増し加えて建てるものであるといえ、「増築」に該当すると認められる。また、本件工事1(2)は、前記のとおり、エントランスホールと内ホワイエとの間の大谷石の柱の間に、ガラスの自動扉又はガラス壁を設置するものであり、版画美術館の躯体に変更を加えるものではなく、既存の柱を利用し、壁等を設けることによって、一連の空間を分割するにすぎないものであるから、建造物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲での改変にとどまるものといえ、「模様替え」に該当すると認められる。さらに、本件工事1(3)及び(4)は、前記のとおり、工房、アトリエ及び喫茶室の壁並びに学芸員室と美術資料閲覧室との間の間仕切り壁を撤去するものであり、版画美術館の躯体に変更を加えるものではなく、内部の空間の区切り方や入口の位置及びレイアウトを利用しやすいように変更するにすぎないものであるから、やはり、建造物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲での改変にとどまり、「模様替え」に該当すると認められる。

(2) もっとも、著作権法は、著作物を創作した著作者に対し、著作者人格権として、同法20条1項により、その著作物の同一性を保持する権利を保障する一方で、建築物が、元来、人間が住み、あるいは使うという実用的な見地から造られたものであって、経済的・実用的な見地から効用の増大を図ることを許す必要性が高いことから、同条2項2号により、建築物の著作者の同一性保持権に一定の制限を課したものである。このような法の趣旨に鑑みると、同号が予定しているのは、経済的・実用的観点から必要な範囲の増改築であって、いかなる増改築であっても同号が適用されると解するのは相当でなく、個人的な嗜好に基づく恣意的な改変や必要な範囲を超えた改変については、同号にいう「改変」に該当しないと解するのが相当である。

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