『共有著作権とは?著作権の共有には注意すべき点があります 2/2』
▶ 共同著作物等の権利侵害
共同著作物の各著作者は、他の著作者の同意を得ないで各人がそれぞれ、著作者人格権の侵害に対し差止請求権(112条)を行使することができます(法117条1項)。侵害行為に対して著作者全員の共同意思に基づかなければその差止が請求できないとすることは権利の実効性の面で著作者に不利であると考えられるからです。
一般に、共有財産権の侵害については、各共有者は単独で共有財産権全体に対する妨害の排除を請求することができるものとされていて、共有著作権や共有著作隣接権の侵害の場合における差止請求権についても、各共有権者による単独の行使が認められるところです(2項)。共同著作物の著作者人格権の侵害の場合にも、各著作者の人格的利益がその1つの共同著作物に混然一体となって融合していることから、その侵害に対する差止請求権の行使については、共有財産権の場合と異なる取扱いをする必要性はありません。ただ、法64条に引きずられて反対に解されるおそれもあるため、法117条1項で確認的に規定したものです。
共同著作物の著作者人格権が侵害された場合において各著作者が単独でそれぞれの損賠賠償を請求できるかについては、著作者人格権にはその性質上「持分」を考えることができないため、法117条では規定されていません。もっとも、規定されていないことは、各著作者が自ら蒙った精神的損害を立証して、かかる損害の賠償を請求することを排除する趣旨ではないと考えます。したがって、各著作者が自らが蒙った精神的損害を立証できれば、かかる賠償請求を違法・不当とするべきではないと思います。
法117条では、著作者人格権の侵害を理由とする名誉回復等の措置請求(115条)についても明記されていません。この場合、通説は、どのような名誉回復等の措置を請求するかは著作者全員の合意を必要とする、と解しているようです。ただ、例えば、共同著作者の一人の氏名だけが意図的にないし明らかな悪意をもって削除されていたり、表示されていないような場合には、必ずしも他の著作者の同意を得る必要はないと思います。事案に応じて、裁判所の合理的判断が期待されるところです。
共同著作物の各著作権者又は共有に係る著作権の各著作権者は、他の著作権者の同意を得ないで各人がそれぞれ、差止請求(112条)又はその著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害の賠償の請求(民法709条参照)若しくは自己の持分に応じた不当利得の返還の請求(民法703条参照)をすることができます(117条1項・2)。共有に係る著作隣接権についても同様です(同2項)。
▶ 共有者のよる不実な登録に対する他の共有者による抹消請求の可否
この点については、以下の裁判例(▶平成14年08月29日大阪地方裁判所[平成11(ワ)965])が参考になります:
『また、本件ソフトウエアの著作権は、前記(1)のとおり、本件登録[注:被告Eは、平成10年1月28日、本件ソフトウエアのプログラムの著作権者として、財団法人ソフトウエア情報センターにおいて、プログラムの第一発行年月日等の登録を行った。]において著作物が最初に公表された年月日とされた平成9年8月4日時点では、原告と被告Eの共有であり、著作権者を被告Eのみとする本件登録は、この点で実体に反するものといえる。
著作権法76条1項の第一発行年月日等の登録は、著作権者が当該著作物が最初に発行され又は公表された年月日の登録を受ける制度であり、その法律上の効果は、登録に係る年月日にその著作物が第一発行又は第一公表されたものと推定されることにあるが(同条2項)、加えて、著作権登録原簿に著作者として登録されている者が著作権者であることを公示する事実上の効果があり、この事実上の効果を期待して登録が行われることも少なくない。
共有著作物について、共有者の一部の者が単独で著作者として第一発行年月日の登録をした場合、著作権者として登録されなかったその余の共有者は、その後、著作権登録申請(著作権法77条)をしようとしても、著作権登録申請書に前登録の年月日及び登録番号を記載することが要求されていること(著作権法施行規則8条の3第1項、別記様式第六4〔備考〕2、同様式第三〔備考〕6)から、前登録である第一発行年月日登録の内容と齟齬するものとして拒絶されるおそれがあり、また、第三者に対する権利行使において、自己が著作権者の一人であることの立証につきより重い負担を負うことになるなど、円満な著作権の行使を事実上制約されることになる。この点において、著作権者以外の者が第一発行年月日の登録を受けた場合と変わりない。したがって、著作権の共有者は、自己が持分を有する著作物について、共有者の一部の者が自分を単独の著作者と表示して著作年月日登録をした場合には、当該他の共有者に対して、当該著作年月日登録の抹消登録手続を求めることができると解するのが相当である。
以上によれば、原告の被告Eに対する本件登録の抹消登録手続請求は理由がある。』
AK
【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/