著作権侵害罪の適用事例(美術商が版画の違法複製・販売をした事例)

 

▶令和4年3月9日東京地方裁判所[令和3特(わ)2235]

(量刑の理由)

本件は,美術商として美術品の売買等を行っていた被告人が,版画の修復作業等の職人であった共犯者とともにMの作品5点について合計7枚を著作権者に無断で複製し(判示第1),また単独で,無断で作品2 点の複製物を代金合計73万円で販売して頒布した(判示第2及び第3)という著作権法違反の事件であ る。

被告人らは,平成20年頃から,著作権者に無断で有名画家の作品の版画を複製し,美術商である被告人が販売していたものであり,本件各犯行は長期間にわたって職業的・常習的に行われた犯行の一環である 。そして,本件各偽作版画は,極めて精巧に作成されており,版画市場に流通するに至っている。著作権者 の利益を大きく害しており,強い非難を免れない。

被告人と共犯者の関係等についてみると,被告人が複製する作品を定め,オークション等で入手した真作を共犯者に渡して複製を依頼していたものであり,被告人は主導的立場にあったものである。また,共犯者から受け取った偽作版画については,被告人が倉庫で管理する中で,適宜販売していたもので,被告人は偽作版画の複製から販売による利益獲得まで全ての過程を掌握していた 。

以上からすれば,被告人の刑事責任は重いが,一方で,被告人は,事実関係を認めた上で,反省し,著作権者に対する被害回復にも努め,N県立美術館M館に対しては1400万円の寄付をしており,一部の著作 権者は,被告人の厳罰までは望んでいない。そして,被告人に前科前歴がないこと,被告人の妻が監督を誓約していること等も考慮すれば,本件で直ちに実刑判決とするのは躊躇されることから,主文[注:「被 告人を懲役3年及び罰金200万円に処する。」]のとおり の懲役刑を科した上で,その執行は猶予するが,この種事犯が経済的にも不合理であることを示すために, 主文のとおりの罰金刑を併科するのが相当と判断した。

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