発信者情報開示手続費用の一部を著作権侵害に基づく不法行為との間で相当因果関係にある損害と認めた事例
▶令和6年11月14日東京地方裁判所[令和5(ワ)70611]▶令和7年6月2日知的財産高等裁判所[令和6(ネ)10088]
(2) 発信者情報開示手続費用
ウェブサイトに匿名で投稿された記事等が不法行為を構成し、その被害者が損害賠償請求等の手段を取ろうとする場合、被害者は、侵害者である投稿者を特定する必要がある。その手段として、被害者は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律により、発信者情報の開示を請求する権利を有する。もっとも、これを行使するためには、多くの場合、同法所定の裁判手続その他の法的手続を利用することが必要となる。その手続遂行のためには一定の手続費用を要し、さらに、事案によっては弁護士費用を要することも当然あり得る。そうすると、これらの発信者情報開示手続に要した費用は、当該不法行為との間で相当因果関係のある損害となり得るといってよい。
本件では、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件開示手続を原告代理人らに委任し、その弁護士費用として着手金38万5000円及び報酬金11万円(いずれも消費税込)を支出したことが認められる。発信者情報開示手続の性質、内容等を考慮すると、このうち20万円をもって、被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の主張はいずれも採用できない。
[控訴審同旨]
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