法則文の著作物性を認めなかった事例
▶平成17年12月26日東京地方裁判所[平成17(ワ)10125]
(注) 法則文とは,仏教において,法要に際し,その趣旨を述べる文言である。
ア 原告表現2
原告表現2は,位牌開眼法則の「・・・盡法界一切の三寳に白して言さく・・・」の「盡法界」の部分である。
証拠によれば,天台宗南総教区教学法儀布教研修所発行の乙1書籍の「位牌開眼法則」の項の原告表現2に相当する箇所には,「・・・尽空法界一切の三宝に・・・」との表現があること,天台宗栃木教区日光部法儀研究会発行の乙2書籍の原告表現2に相当する箇所には,「・・・尽空法界の一切の三宝に・・・」との表現があること,比叡山聖尊院所蔵の「安樂集」(以下「乙14書籍」という。)の原告表現2に相当する箇所には,「・・・盡法界一切ノ三寳ニ・・・」との表現があることが認められる。乙14書籍が古くからある書籍であることについて,原告も古式の資料であることは認めており,その体裁等から,原告書籍の発行以前に発行されていたものと推認される(以下,乙14書籍を証拠として用いる場合は同様)。
上記認定の事実によれば,原告表現2は,ごく短いものであり,また,原告書籍発行以前に発行されていた書籍(乙1書籍,乙2書籍及び乙14書籍)に類似した,あるいは,これらの書籍において同一の表現が用いられているなど,平凡でありふれた表現であるということができるから,筆者の個性が表現されたものとはいえない。
したがって,原告表現2は,創作的な表現であるということはできない。
イ 原告表現4
原告表現4は,位牌開眼法則の「・・・今此の道場/斉場/家屋に於いて新たに○○靈位の靈牌を建立し・・・」(「道場」「斉場」及び「家屋」は,3列に並べて記載されている。)の「道場/斉場/家屋」の部分で
ある。
証拠によれば,乙1書籍の「位牌開眼法則」の項の原告表現4に相当する箇所には,「・・・今此の道場に於て・・・」との表現があること,乙2書籍の原告表現4に相当する箇所には,「・・・○○家の浄室に於いて・・・」との表現があること,乙14書籍の原告表現4に相当する箇所には,「・・・今此ノ靈塲ニ於テ・・・」との表現があることが認められる。
上記認定の事実及び証拠によれば,原告表現4の「道場/斉場/家屋」は,法要を行う場所を特定する文言を述べる部分であることが認められる。そして,「斉場」及び「家屋」は,いずれも法要を行う場所として一般的であるから,「道場」に,法要を行う場所を特定する選択的な用語として「斉場」及び「家屋」を追加した原告表現4は,平凡でありふれた表現であり,筆者の個性が表現されたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。
ウ 原告表現5
原告表現5は,位牌開眼法則の「・・・今此の道場/斉場/家屋に於いて新たに○○靈位の靈牌を建立し・・・」(「道場」「斉場」及び「家屋」は,3列に並べて記載されている。)の「靈位の」の部分である。
証拠によれば,乙1書籍の「位牌開眼法則」の項の原告表現5に相当する箇所には,「・・・新に(戒名)霊牌を造立し・・・」との表現があること,乙2書籍の原告表現5に相当する箇所には,「・・・新たに○○居士(大姉)霊牌を建立し・・・」との表現があること,乙14書籍の原告表現5に相当する箇所には,「・・・新ニ某居士/大姉靈牌ヲ建立シ・・・」(「居士」及び「大姉」は,2列に並べて記載されている。)との表現があることが認められる。また,証拠によれば,国書刊行会発行の書籍「諷誦・歎徳・表白・引導大宝典」(昭和59年1月発行。乙15)には,戒名の下に置く文言として,「居士」及び「霊位」が掲げられていることが認められる。
上記認定の事実によれば,原告表現5の直前の「○○」には戒名が入れられるものであるところ,「靈位」という表現は,戒名の下に置く用語としてありふれたものであり,また,それを前提にすれば,戒名の下に「靈位」という文言を付加する表現もありふれたものである。そうすると,原告表現5は,筆者の個性が表現されたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。
(略)
イ 原告表現27
原告表現27は,塔婆開眼法則の「・・・○○靈位○○回忌の忌辰を迎えて・・・」の「靈位」の部分である。
証拠によれば,天台宗東京教区宗務所発行の乙4書籍の原告表現27に相当する箇所には,「・・・(戒名)○回忌の忌辰を迎えて・・・」との表現があることが認められる。
上記認定の事実によれば,原告表現27の直前の「○○」には戒名が入れられるものであると認められるところ,上記(2)ウ認定の事実によれば,「靈位」という表現は,戒名の下に置く用語としてありふれたものであり,また,それを前提にすれば,戒名の下に「靈位」という文言を付加する表現もありふれたものである。そうすると,原告表現27は,筆者の個性が表現されたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。
(略)
(7)小括
上記のとおり,原告が本件法則文と被告法則文との同一性を主張する箇所は,いずれも,創作的な表現であるとは認められないので,本件法則文と被告法則文とは,仮に,同一性を有するとしても,表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから,被告法則文が本件法則文を複製したものであるということはできない。
【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/