「アイデアの盗用」に基づく不法行為の主張を退けた事例

 

▶令和6年1月18日東京地方裁判所[令和4(ワ)70089等]▶令和6年8月28日知的財産高等裁判所[令和6(ネ)10016]

2 反訴請求について

(1) 事案に鑑み、まず、争点 2-1(被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無)について判断する。

ア 被告は、まず、原告が被告の了解なく本件施策を実施したことは被告アイデアの盗用に当たるなどとして、原告の行為が被告に対する不法行為となる旨を主張する。

しかし、そもそも、被告アイデア(「送る人にも受け取る人にも伴に徳がある」)は、年賀はがき等を受け取った側だけでなく、送った側にも賞金等何らかの利益を付与することにより年賀はがき等の販売促進を図るというものであり、単なるビジネス上のアイデアに過ぎない。しかも、被告アイデアに類似する施策は原告において遅くとも平成19年以降何度も実施されていたことに鑑みると、被告アイデアは、被告が原告に対して提案した平成26年時点において、既にありふれたものであったといえる。また、上記事情を踏まえると、原告は、被告による被告アイデアの提案とは無関係に本件施策を実施したことがうかがわれ、本件施策の実施をもって被告アイデアを盗用したとはいい得ない。そうである以上、原告がその実施に当たり被告の了解を得るべき理由も必要も認められない。

また、本件著作権に係る著作権登録においては、平成元年1月20日をもって「著作物が最初に公表された年月日」とされているが、これを裏付けるに足りる証拠はない。その点をひとまず措くとしても、その登録日はこれに遥かに後れ、被告が原告に対し被告アイデアを提案等した平成26年よりも更に後の平成 28年9月1日である。しかも、本件実用新案権に係る実用新案登録出願は平成25年11月に行われたところ、その願書に添付された明細書及び図面には、本件著作権に係る著作権登録において「著作物の種類及び内容」欄に「著作物の内容又は体様」として表示されているものとほぼ同一の構成が記載されている。そうすると、本件著作権に係る著作物が最初に公表されたとされる上記日付の記載につき、裏付けなくこれをにわかに信用することはできない。そもそも、本件著作権に係る著作物として登録されているのは、「送る人にも受け取る人にも徳がある」ないしこれに類する文章表現ではない。

これらの事情を総合的に考慮すれば、被告が、平成26年頃から本件施策が実施されるまでの数年間、bに対し継続的に被告アイデアの提案ないし売込みをしてきたとしても、原告による本件施策の実施をもって被告との関係で違法なものとはいえない。その他原告の行為が被告に対する不法行為に当たると評価すべき事情を認めるに足りる証拠はない。

したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。

 

[控訴審同旨]

3 被告の反訴請求について

反訴争点2-1(被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無)について

⑴ 被告の反訴請求である被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求に理由がないことは、原判決の…に記載のとおりであるから、これを引用する。

⑵ 被告は、当審における補充主張において、被告アイデアは、年賀はがきの授受を行う者双方が抽選により商品等を受け取れる「方法論」を提案したものであり、原告はこれを盗用したなどと主張する。しかし、原告は、既に平成19年以降、所定の枚数以上の年賀はがきを予約し、又は購入した者に応募はがき又は抽選券を交付し、抽選で当選した者に商品等を提供するという内容の施策を複数回実施してきたのであるから、年賀はがきを購入した者も抽選により商品等を受け取ることができるようにするというアイデアは、これが仮に「方法論」だとしても、原告に提案がされた平成26年時点では特に独創性のあるものではなく、ありふれたものになっていたというべきである。したがって、本件施策が被告アイデアに基づき実施されたものと認めることはできないし、本件において被告アイデアが法的に保護すべき利益となるものと解することもできない。よって、被告の前記主張を採用することはできない。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/