修士過程卒業制作作品の映画著作物性,その著作者及び著作権者

 

▶平成25年3月25日東京地方裁判所[平成24(ワ)4766]▶平成25年09月10日 知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10039]

2 争点(1)(原告は本件映画の著作者及び著作権者であるか。)について

(1) 本件映画の著作者について

証拠によれば,原告は,本件映画の内容を具体的に構想し,脚本を作成し,映画の制作指揮を執り,演出,編集等を行ったものであって,本件映画の全体的形成に創作的に寄与した者であると認められるから,本件映画の著作者であると認められる(著作権法16条本文)。

なお,本件映画の内容からは,本件映画において,被告の講義や研究内容から着想を得た部分が存在することがうかがわれ,また,本件映画の製作に当たり,被告の協力を得た部分が存在するものと認められるが,本件映画の著作者に関する上記認定を左右するものとは認められない。

(2) 本件映画の著作権者について

ア 証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告は,自己の修士卒業制作として,本件映画を製作することを発案し,本件映画の内容を具体的に構想して脚本を作成し,製作に従事するスタッフを選定して雇用し,これらのスタッフとの契約にかかる費用や各種経費,必要機材の購入,取材費用等を負担したものと認められるから,本件映画の製作に発意と責任を有する者に当たり,本件映画の映画製作者(著作権法2条1項10号)であると認められる。原告が本件映画の著作者でもあることは前記(1)のとおりであるから,本件映画の著作者が,映画製作者である原告に,本件映画の製作に参加することを約束していることは明らかであり,本件映画の著作権は,その完成時において,原告に帰属していたものと認められる(同法29条1項)。

イ この点,被告は,本件映画のクレジット表示から,本件映画の著作権は原告ではなくライフサイクル研究所に帰属すると主張する。

確かに,証拠によれば,本件映画の最後において,「著作権2002 ライフサイクル研究所」とのクレジットが表示されることが認められる。しかし,原告は,本件映画のクレジットに,ライフサイクル研究所が著作権者として表示されるのは便宜上のものであり,本件映画の著作権は原告に帰属している旨主張し,これに沿う内容の陳述書を提出しているところ,ライフサイクル研究所(「Life Cycle Institute」。現在の商号は「Ganbare Nippon!」)が,原告を最高責任者(代表者),書記役及び財務役として,平成13年に設立された法人であり,その取締役は原告のみであり,本店所在地も原告の住所地と同じであって,実質的には原告の個人企業であると解されることを考慮すれば,原告の上記主張は信用性を有するものというべきである。

ほかに,本件映画の著作権が原告から上記研究所に譲渡されたことなどをうかがわせる事情も存在しないことを考慮すれば,本件映画の著作権は,ライフサイクル研究所ではなく,原告に帰属していると認めるのが相当である。

(3) 以上によれば,原告は,本件映画の著作者であり,かつ,著作権者であると認められる。これに反する被告の主張は採用しない。

[控訴審同旨]

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