法61条2項の「特掲」の解釈(「特掲」がなかったとした事例)
▶平成18年12月27日東京地方裁判所[平成16(ワ)13725]>
(注) 以下、「本件映画」とは、「宇宙戦艦ヤマトTVシリーズ」を指す「本件映画1」と、「さらば宇宙戦艦ヤマト」を指す「本件映画2」を総称したもの(「宇宙戦艦ヤマト作品」)を意味する。
(2) 前記(1)で認定した事実を前提にして,以下,甲3契約において,本件映画の翻案権も譲渡の対象となっていたか否かについて検討する。
ア 著作権法61条2項は,「著作権を譲渡する契約において,第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは,これらの権利は,譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定するところ,これは,著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることから,二次的な利用権等を譲渡する場合には,これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求したものであり,このような同項の趣旨からすれば,上記「特掲され」たというためには,譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要であり,契約書に,単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず,譲渡対象権利として,著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより,当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるというべきである。
原告は,著作権法61条2項の「特掲」があったというためには,翻案権が当該譲渡の目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必要はなく,翻案権も譲渡の目的に含まれていることを十分認識できる程度の記載で足りる旨主張するが,上記の説示に照らして,同主張が採用できないことは明らかである。
そこで,甲3契約書に翻案権譲渡の特掲があったといえるかについて検討するに,前記(1)のとおり,甲3契約書には,「対象権利および権利行使素材の所有権の一切を・・・譲渡し」(2条)との記載,及び「対象権利」の定義として,「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」(1条の4)との記載があるのみであり,「著作権法27条の権利」又は「翻案権」等の文言を具体的に挙げて明記して,同権利を譲渡する旨の記載はない。
したがって,甲3契約書には,翻案権を譲渡の目的とする特掲があったということはできず,また,契約書に明記はしないが譲渡の対象に含まれる旨が合意されたなどの特段の事情も認められないから,著作権法61条2項により,甲3契約において,本件映画の翻案権は,著作権を譲渡した者,すなわちP2に留保されたものと推定される。
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