商品化権許諾契約につきその契約締結の成否等が争点となった事例

 

▶平成17年12月8日大阪地方裁判所[平成15(ワ)10873]

2 争点(1)(被告と原告Sとの間で本件許諾契約が締結されたか否か。)について

(1) 前記認定事実によれば,原告Sと被告は,電子メール等のやりとりにより,平成15年5月中旬には,被告が,原告Sに対して本件キャラクターの商品化を許諾すること,指定商品はTシャツ等のアパレル関連の商品とすること(ただし,原告Sは独占的な商品化権被許諾権者ではない。),サブライセンシーは原告Oのみとすること,年間最低保証使用料は500万円で,ロイヤリティーは上代の5%とすること,契約期間は3年とすることといった,商品化権許諾契約の主要な点について口頭で実質的に合意され,それ以降,約3か月弱の間,その実質的合意に沿う形で,現実に本件キャラクター商品が販売され,年間最低保証使用料が授受され,さらに実際販売量に応じたロイヤリティーも授受されたことが認められる。これらの原告S及び被告の行動には,前記のような実質的合意に沿った本件許諾契約が正式にも成立していたのではないかと思わせる側面があることは否定できない。

(2) しかし,その一方で,契約書の条項の内容については,商品化の前後を通じて交渉が重ねられ,同年6月17日に,被告が法務部の最終確認を終えたという甲1契約書案を原告サクラに送付し,同月21日に再度微修正を加えた乙2の4契約書案を送付したが,同年7月10日に,原告Sから数か所に修正を加えた甲2契約書案が提示され,その後は調印の日程も定まらないまま,結局契約書へは調印されず,被告の通告により取引が終了したことが認められる。

確かに一般に契約が成立するためには,法律上一定の要式性の履践が契約の効力発生要件とされている場合を除き,契約書の作成等の形式的行為がなければならないというわけではなく,口頭による合意であっても成立し得るものであるし,さらには黙示の意思表示の合致によっても契約の成立が認められる場合もある。また,原告Sと被告のような企業間の取引であるからといって,契約を締結する際に必ず契約書が作成されるとは限らないものではある。しかし,本件での本件許諾契約締結に向けた当事者の行動を見ると,被告は,原告Sと被告との間で契約内容の協議が始まった当初から,原告Sが電子メールによって概略的に契約内容の提案をしたのに対し,被告は契約書案(乙2の1契約書案)を送付する形で返答をしており,その後も協議の進展を踏まえて契約書案(甲1契約書案とそれを微修正した乙2の4契約書案)を送付しているのであって,甲1契約書案については被告の法務部が関与して最終確認も行っているのであるから,被告としては,契約を正式に締結するに当たっては,社内各部署でチェックを受けた上で契約条項を細部まで確定し,それを契約書として完成して調印すべきものという意思を有していたことは明らかである。そしてまた,原告Sも,被告から提示された契約書案に対して,修正案(乙2の2契約書案,甲2契約書案)を提出する形で契約条項の詰めに向けた協議を行っているのであって,やはり契約書の作成・調印を前提とし,それに向けた行動をとっていたということができる。

そして,本件においては,被告が原告Sに最初に送付した乙2の1契約書案にも,第3条(1)に「この契約は,両当事者が署名した日に効力を発し,かつ,この契約の第14条によって解除されない限り,1年間効力を有する。」と明記され,効力の始期に関する条項の内容は,原告Sが修正を加えた乙2の3契約書案及び甲2契約書案においても乙2の1契約書案のままとされていたのであるから,被告のみならず原告Sも,それら契約書案のやりとりによって締結に向けた協議を進めている契約は,署名(調印)した日に正式に締結したことになり,成立するものとされていることを認識していたはずである。

このように,当事者が,契約書を作成し調印することによって契約を締結することを予定している場合においては,調印に至る過程での当事者間の口頭あるいは文書によるやりとりは,いかに主要部分について実質的に合意がなされ,一部それに則った行動がとられていようと,未だ契約交渉の一環にとどまるのであって,契約の正式な締結には至っていない,と解するのが相当である。

(以下略)

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