絵本の著作者の認定が問題となった事例

 

▶平成11年11月17日東京高等裁判所[平成10(ネ)2127]

(四) 本件絵本(一)の創作的表現の核心に関する主張について

控訴人らは、本件絵本(一)の創作的表現の核心部分が、扱うテーマやストーリーを構想し、これを具体的に表現する絵柄やその配置、配色の決定及び文字記述部分にあり、これらを創作した者が著作者たり得るものであって、単に決められた色を塗ったり、輪郭線の仕上げをするに止まる場合は、単なる補助作業であって著作物の創作行為とは評価できないとの判断(原判決)を非難し、本件絵本(一)の創作的表現の核心部分は、キャラクターを描くことにあると主張するが、前示の本件絵本(一)の創作過程の認定を踏まえ、かつ、本件絵本(一)が幼児を対象とし、比較的単純な絵柄と少ない文字とで構成されていることに鑑みれば、前示判断に何ら誤りがあるとはいえず、控訴人らの主張は採用することができない。

(略)

(九) 絵の具の配合等を補助的作業とした判断に関する主張について

控訴人らは、色塗りや仕上げの輪郭線を引く作業に亡Aが関わったときに、その作業の中で亡Aが豊富な経験を生かして絵の具の配合をしたり、被控訴人よりも上回る技術を駆使して仕上げの輪郭線を引いていたとしても、本件絵本(一)の創作過程における補助的作業に止まるとした判断(原判決)に対し、絵の具の配合が絵画一般について色を決める決定的な要素であり、また本件絵本(一)では輪郭線が絵の雰囲気、キャラクターの善し悪しを決める重要な要素であるとして、右判断が誤りであると主張するが、前示のとおり、本件絵本(一)の創作的表現の核心部分が、扱うテーマやストーリーを構想し、これを具体的に表現する絵柄やその配置、配色の決定及び文字記述部分にあり、これらを創作した者が著作者たり得るものであって、単に決められた色を塗ったり、輪郭線の仕上げをするに止まる場合は、単なる補助作業であって著作物の創作行為とは評価できないことに鑑みて、右判断は相当であって誤りはない。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/