法114条2項の意義と解釈

 

▶平成15年3月28日東京地方裁判所[平成11(ワ)13691]▶平成16年6月29日東京高等裁判所[平成15(ネ)2467等]

(注) 本件各著作物は,いずれも小学生用国語科検定教科書に掲載されている。被告らは,上記教科書に準拠した小学校用国語テスト(「本件国語テスト」)を印刷,出版,販売している。

 

(1) 主位的主張(著作権法114条1項[注:現2項。以下同じ]による損害の主張)について

著作権法114条1項は,当該著作物を利用して侵害者が現実にある利益を得ている以上,著作権者が同様の方法で著作物を利用する限り同様の利益を得られる蓋然性があることに基づく規定と解される。証拠と弁論の全趣旨によると,原告ら及び参加人は,作家,翻訳家又はその相続人であって,自ら本件各著作物の出版を行っていないものと認められるから,原告らが,被告らと同様の方法で著作物を利用して利益を得られる蓋然性はないものと認められる。したがって,本件においては,同法114条1項の適用の余地はないものというべきである。

 

[控訴審]

(1) 主位的主張(著作権法114条2項による損害の主張)について

著作権法114条2項は,当該著作物を利用して侵害者が現実にある利益を得ている以上,著作権者が同様の方法で著作物を利用する限り同様の利益を得られる蓋然性があることに基づく規定であると解される。証拠と弁論の全趣旨によると,一審原告らは,作家,翻訳家であって,自ら本件各著作物を制作販売するための設備,技術を有せず,その制作販売を行うことが可能な状況にはないと認められるから,一審原告らが,一審被告らと同様の方法で教科書掲載著作物を利用して利益を得られる蓋然性はないというべきである。したがって,本件においては,同項の適用の余地はないものというべきである。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/