ゲームソフト同士の侵害性が問題となった事例(まとめ部分)

 

▶平成14年11月14日東京地方裁判所[平成13(ワ)15594]▶平成16年11月24日東京高等裁判所[平成14(ネ)6311]

[控訴審]

(6) 全体的・総合的観察

以上,詳細に判示したとおりであるが,重要判示部分を要約すると,以下のとおりである。 

前記(3)で判示したとおり,ゲームシステムに基づいて変化する影像及びその全体構成とストーリーは,「戦闘マップをプレイする場面」の重要な構成要素であるということができる。

ゲームシステムに基づいて変化する影像及びその全体構成に関し,控訴人らは,両ゲームの,ゲームソフト全体の構成(共通表現(2)),「戦闘マップをプレイする場面」の構成(共通表現(4)),「戦闘マップをプレイする場面」における待機,攻撃,その他の行動の場面の表現(共通表現(6)ないし(42))は,いずれも独自で特徴的であると主張する。しかしながら,上記(5)で判示したとおり,ゲームソフト全体の構成及び「戦闘マップをプレイする場面」の構成には,確かに共通する部分が存在するものの,これらの共通部分は,他のゲームでも採用されている極めて典型的なものであり,創作性があると認めることはできない。また,両ゲームは,待機,攻撃,その他の各行動の場面についても,共通する部分を有すると認められるが,これらの部分は,いずれも,各場面を構成する影像表現の組合せ・配列も含め,アイデアにすぎないか,創作性が認められない表現にすぎず,創作性が認められる表現についても,その程度は低いというべきである。加えて,上記各場面については,創作性ある表現において両ゲームが相違するものも存在するのであるから,被控訴人ゲームに接した者が,トラキアの本質的な特徴を感得することは困難であるといわざるを得ない。

他方,ストーリー(共通表現(3))については,(5-3)で判示したとおり,両ゲームで共通しているのは,抽象的な筋立てにとどまり,具体的なストーリーとしては,全体的なストーリー,各戦闘マップで展開するストーリー,ユニット間の会話のいずれにおいても相違していると認められる。また,控訴人らが主張する「本質的ストーリー」(共通表現(5))は抽象的かつあいまいなものであって,表現性を認めることはできない。したがって,両ゲームは創作性のあるストーリーにおいて,相違しているということができる。

さらに,「戦闘マップをプレイする場面」を構成する他の要素のうち,ユニット(共通表現(1))については,上記(5-1)で検討したとおり,両ゲームのユニットには共通する部分も認められるが,いずれもその共通する部分は,アイデアにすぎないか,有意な創作性を有するとは認められないものであり,両ゲームのユニットが全体として同一性,類似性があるとは認めがたい。むしろ,両ゲームに登場する具体的なユニットは,それぞれが異なるユニットとして認識することが相当なものである。そして,両ゲームの戦闘マップや音楽が相違していることも,翻案該当性を否定する一事情ということができる。

以上判示したとおりであって,帰するところ,両ゲームは,アイデアなどの表現それ自体でない部分又は創作性の乏しい表現において共通するにすぎないのであるから,被控訴人ゲームに接する者がトラキアの表現上の本質的な特徴を感得することは困難であるというべきであり,被控訴人ゲームがトラキアの翻案に当たると認めることはできない。

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