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「誕生花」の写真集(花の選択, これに対応する写真・花言葉の組合わせ全体)の(編集)著作物性を認定した事例
▶平成16年02月12日大阪地方裁判所[平成14(ワ)13194]
1 争点(1)(著作権の成立する範囲)について
原告は、「誕生花」としての花の選択並びにこれに対応する写真及び花言葉の組合わせ全体に、原告の著作権が成立すると主張するので検討するに、前記によれば、本件写真集は、1年366日に1日ごとに計366種類の花を1つずつ「誕生花」として対応させ、写真家である原告が撮影したそれぞれの花の写真と花言葉を組み合わせて製作した写真集であり、それぞれの日に対応する「誕生花」としての花及びこれに対応する花言葉の選択は最終的に原告が行ったものであり、花言葉の一部は原告自らが創作したものである。この事実と証拠によれば、本件写真集に用いられた366枚の花の写真は、原告の構想する「誕生花」に合致する花を、主として自然の中で咲いている花の中から取材旅行で探し出し、毎年定点観測を行うことなどを繰り返して、約5年をかけて撮影したものの中から選択したものであることが認められ、これらの写真は、その撮影対象・時期の選定、撮影の構図等において創作性があり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして、著作物性を有するものであると認められる。そして、これらの写真のみならず、1年の各日ごとの「誕生花」の選択とこれに対応した写真及び花言葉の組み合わせとして表現されたものの全体は、1年366日の「誕生花」とその花言葉という統一的なまとまりのある意味を有しており、単なる花の写真の集合を超えて、原告の思想又は感情が創作的に表現されたものとして、著作権法上の著作物に該当するものと認めるのが相当である(以下、本件写真集における「誕生花」としての花の選択並びにこれに対応する写真及び花言葉の組合せ全体を「本件誕生花」という。)。
この点について、被告らは、「誕生花」の選択についても、花言葉の表現そのもの及び花との組合せについても、表現方法の創作性はないと主張する。
確かに、1年の各日に一定の花を対応させることや、一定の花に「花言葉」を対応させるという手法が古来から存在することは原告が自認するところであるし、(証拠)及び弁論の全趣旨によれば、原告が本件写真集ないし本件ポスターにおける「誕生花」の花言葉として選択した言葉の多くは、一般に流布され、又は他の出版物中にも見られるものであることが認められる。また、本件写真集における各日に対応する「誕生花」の具体的な選択及びそれぞれの花言葉も、C著「花を贈る事典366日」(平成5年発行)と共通するところが多く見られる。原告は、「誕生花は人生の応援花」とのコンセプトから、一般に流布されている花言葉でもこのコンセプトにふさわしくないものについては、自ら創作したと主張するが、花言葉の一部に原告が創作したものがあるとしても、花言葉自体は、一般的な言葉を選択したごく短い表現である(例えば、1月1日の「梅」は「忠実、気品」、1月2日の「シンビジューム」は「飾らない心、素朴」といったものであり、原告が自ら創作した花言葉がどれであるかは特定されていないが、本件ポスターによれば、どの花言葉も同程度の長さと表現態様である。)。
しかしながら、1年の各日に対応した花を「誕生花」として選定するというアイデアや個々の花言葉の表現自体は著作権法による保護の対象にならないということと、1年366日のそれぞれの日に対応した「誕生花」を具体的に選定し、その花言葉を選択ないし創作し、これと各花の写真とを組み合わせて表現することが全体として著作物に当たるかどうかということとは別個に考える必要がある。そして、本件写真集におけるこれらの組み合わせからなる表現(本件誕生花)は、前述のとおり、全体として統一的に原告の思想又は感情を創作的に表現したものと認めるに足りるものというべきである。したがって、本件誕生花について著作物性を肯定することができる。
【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/