「鍋の持ち手のデザイン」の著作物性を否定した事例
▶平成24年03月22日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10062]
著作権法は,著作物について,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,・・・美術・・・の範囲に属するものをいう。」と規定するが,さらに「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と重ねて規定する(2条1項1号,2項)。また,意匠法は,「この法律で『意匠』とは,物品・・・の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて,視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」と規定する(2条1項)。上記の規定振りなどに照らすならば,産業上利用されることを予定して製作される商品等について,その形状,模様又は色彩の選択により,美的な価値を高める効果がある場合,そのような効果があるからといって,その形状,模様又は色彩の選択は,当然には,著作権法による保護の対象となる美術の著作物に当たると解すべきではなく,その製品の目的,性質等の諸要素を総合して,美術工芸品と同視できるような美的な効果を有する限りにおいて,著作権法の保護の対象となる美術の著作物となると解すべきである。 この観点から,検討する。
(略)
本件デザイン1は,実用品である鍋の持ち手のデザインであること,鍋本体側の断面が横長楕円(35度楕円),手元側の断面が縦長楕円(45度楕円)の二つの楕円を直線の集合からなる曲面で覆われていること,鍋本体に近接した部分に指止め部分が設けられていること,下方に折れ曲がったジョイント部があることなどの形態を呈したデザインであると推認される。上記の形態からなるデザインは,美的な観点から選択された面もあるが,実用品である鍋等の取っ手としての持ちやすさ,安定性など,機能的な観点から選択されたものともいえる。
そのような点を勘案すると,本件デザイン1は,美術工芸品と同視できるような美的な効果を有するものとまではいえず,著作権法の保護の対象となる美術の著作物に当たるとすることはできない。したがって,本件デザイン1が著作権法による保護の対象となるとは認められない。
また,立体のデザインモデルについても,同様の理由により,著作権法による保護の対象となるとは認められない。
【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/