「糸半田供給機(半田フィーダ)」の著作物性を否定した事例

 

▶平成29年12月22日東京地方裁判所[平成27(ワ)33412]▶平成30年6月7日知的財産高等裁判所[平成30(ネ)10009]

[控訴審]

(2) 争点(2)ア(原告商品の著作物性)について

ア 控訴人は,産業用の利用を目的とする機器であっても,創作性を備えるものについては,美術の著作物として著作物性が肯定されるべきであるとした上で,原告商品は控訴人代表者の創意工夫に基づいて制作されたものであって,直針状の出口ノズルがフィーダ本体部の先端から突き出た形状で,配線チューブ等がフィーダ本体上部後端からまっすぐに伸びており,小型かつ軽量であって,その全体は端整かつ鋭敏で優雅な美しさが表現されているから,美術の著作物に当たると主張する。

イ この点につき検討するに,著作権法上の美術の著作物として保護されるためには,仮にそれが産業用の利用を目的とするものであったとしても,美的観点を全く捨象してしまうことは相当でなく,何らかの形で美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性を備えていなければならないというべきである。

控訴人が主張するように,原告商品は,ステッピングモータの一部分が飛び出している点を除き,出口ノズルから配線チューブ等に至るまで,各構成が概ね直線状にコンパクトにまとめられた形態を有していることが認められる。しかし,原告商品の外観からは,社会通念上,この機器を動作させるために必要な部材を機能的観点に基づいて組み合わせたもの,すなわち技術的思想が表現されたものであるということ以上に,端整とか鋭敏,優雅といったような何かしらの審美的要素を見て取ることは困難であるといわざるを得ず,原告商品が美的鑑賞の対象となり得るような創作的特性を備えているということはできない。

したがって,この点についての控訴人の主張を採用することはできない。

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