木目化粧紙のデッドコピーにつき一般不法行為を認定した事例

 

▶平成3年12月17日東京高等裁判所[平成2(ネ)2733]

三 控訴人は、本件原画について著作権が認められず、かつ、本件原版の所有権に含まれる無体物の側面から生ずる間接的排他的な支配権能が認められないとしても、原告製品を写真撮影しそのまま製版印刷して製造された被告製品を販売する被控訴人の行為は、不法行為に該当する旨主張するので、この点について判断する。

民法第709条にいう不法行為の成立要件としての権利侵害は、必ずしも厳密な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず、法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべきである。そして、人が物品に創作的な模様を施しその創作的要素によって商品としての価値を高め、この物品を製造販売することによって営業活動を行っている場合において、該物品と同一の物品に実質的に同一の模様を付し、その者の販売地域と競合する地域においてこれを廉価で販売することによってその営業活動を妨害する行為は、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。

これを本件についてみると、(証拠)によれば、原告製品は、木目を寄木風に組んで天然の木目を幾何学化し、ところどころに天然木目のパターンをモンタージュ構成して作り出した本件原画を原版として着色・印刷したものであることが認められる。

そして、被控訴人が被告製品を製作し、これに「カジュアルウッド」という商品名を付して販売していることは当事者間に争いがないところ、被告製品である(証拠)と原告製品である前掲(証拠)とを対比すると、被告製品の模様は、色調の微妙な差異を除けば、原告製品の模様と寸分違わぬ、完全な模倣(いわゆるデッドコピイ)であることが明らかである。

(略)

右認定事実によれば、控訴人は、原告製品に創作的な模様を施しその創作的要素によって商品としての価値を高め、この物品を製造販売することによって営業活動を行っているものであるが、被控訴人は、原告製品の模様と寸分違わぬ完全な模倣である被告製品を製作し、これを控訴人の販売地域と競合する地域において廉価で販売することによって原告製品の販売価格の維持を困難ならしめる行為をしたものであって、控訴人の右行為は、取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を甚だしく逸脱し、法的保護に値する控訴人の営業活動を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。

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