法61条2項の「推定」を覆した事例

 

▶平成18年08月31日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10070]

4 争点3(本件プログラムの翻案権の留保の有無)について

(1) 上記のとおり,本件プログラムの著作権は,92年基本契約,94年基本契約及びF3契約により,当然に,控訴人から被控訴人に譲渡されたところ,92年基本契約及び94年基本契約において,著作権に係る条項は,「本契約に基づき開発されたソフトウェアの著作権は甲(注,被控訴人)に帰属する。」とされ,F3契約においても著作権に係る条項は,「当該製品開発過程で生じる著作権の対象となりうるものは,甲(注,被控訴人)に帰属するものとする。」とされているのみで,本件プログラムの翻案権は,譲渡の目的として特掲されていない。そうすると,著作権法61条2項により,上記翻案権は,本件プログラムの著作権を譲渡した控訴人に留保されたものと推定されることとなる。

(2) 被控訴人は,本件においては,上記推定を覆す事実が認められるとして,本件プログラムの翻案権は,控訴人に留保されずに著作権とともに被控訴人に譲渡された旨主張し,控訴人はこれを争うので,以下検討する。

(略)

(3) 以上によれば,著作権法61条2項の推定にかかわらず,本件においては,関係各証拠によって,上記推定とは異なる,本件プログラムの翻案権を控訴人から被控訴人に譲渡する旨の控訴人と被控訴人間の合意を認めることができるであり,この合意に基づき,本件プログラムの翻案権は,被控訴人が有するものというべきである。

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