【著作権の譲渡】著作権法第61条の解説です 3/4

 

▽    著作権の譲渡のやり方と契約の書面化

 

著作権の譲渡(売買や贈与等)は、著作権者と譲受人との間の契約(売買契約や贈与契約等)によって行われます。売買を例にとると、著作権を誰かに売ろうとする場合、「売ろう」-「買おう」という当事者の意思表示の合致があれば、原則として(特約や特別の事情がない限り)、直ちに(その意思の合致の時に)買主に当該著作権が移転する(その著作権が買主のものになる)ことになります(民法176条)。もっとも、その著作権の譲渡を第三者に対して主張するためには、著作権の移転の登録をしておかなければなりません(77条1号)。

 

以上のように、著作権の移転(譲渡)は、所有権その他の物権の移転と同様に、契約当事者の意思表示のみによって効力を生じます。著作権の売買や交換、贈与、信託等の契約(譲渡契約)が成立した時点で直ちに移転するのが原則なのであって、「契約書」(書面)の作成は契約成立の要件ではありません。しかしながら、譲渡契約を巡るトラブルのうち、契約書が作成されていないことに起因するものが多いのが実情で、譲渡契約の中身についての当事者の意思が書面で確認できないことから、後日、契約の解釈について問題となることが多々あります。そのため、譲渡契約の適正化ないし明確化を促進する観点から、書面性を求めることの当否が検討されたことがあります。『平成18年文化審議会著作権分科会報告書』においては、この問題に関し、「諸外国の立法例をみると著作権の譲渡について書面の作成を要求する立法例は多い。しかし,我が国において同様の立法を行うことは,必ずしも適切であるとは言えない。」と述べています。その根拠として、次のような理由を挙げています。

〇「不動産の所有権その他の物権の譲渡契約一般が要式契約とされていない我が国の法制度の中で,著作権の譲渡契約についてのみ要式契約とするだけの十分かつ合理的な理由を見いだせない」

〇「我が国の民事訴訟では,著作権の譲渡につき争いがある場合には,著作権の譲渡があったと主張する者がその点について主張・立証責任を負うとされ,契約書面がない場合には,それ以外の証拠方法によって譲渡契約の存在が認定されない限り,著作権の譲渡はなかったものと判断される。従って,契約書面のないことによる不利益は,現行法制度のもとでも譲渡を主張する側に発生しており,契約書面以外の方法により著作権譲渡を立証し得る場合にもそれを否定する法制度の必要性・妥当性について疑問がある」

〇「むしろ自由心証主義のもとで裁判所が個別事案に応じた適切な事実認定及び契約解釈を行うことにより,合理的かつ公平な結論を得られると期待できる」

〇「著作物の中には映画やゲームソフトのように経済的価値の大きいものや,小説や芸術写真のように高度の精神的活動の所産であるものが含まれる反面,業務報告書やスナップ写真のようにごく日常的に作成されるものも多数含まれ,それらの著作権の譲渡に一律に契約書面を要求するのは必ずしも適切ではないと思われる」

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/