市営バスの車体に描かれた絵画の著作物性

 

▶平成13年07月25日東京地方裁判所[平成13(ワ)56]

1 争点(1)について

(1) 市営バスの車体に描いた原告作品が,「美術の著作物」に当たるか否かについて判断する。

法2条1項1号は,「著作物」について,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と規定する。「著作物」として保護されるためには,思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であるが,創作性の程度については,制作者の独創性が発揮されたものであることまでは必要でなく,制作者の何らかの個性が表現されたものでありさえすれば足りると解すべきである。また,同号の「美術」につき,これを厳密に定義することには困難が伴うが,「空間又は物の形状,模様又は色彩を創出又は利用することによって,人の視覚を通じた美的な価値を追求する表現技術又は活動」を指すというべきである。そこで,「美術の著作物」として保護されるためには,「思想又は感情を創作的に表現したものであり,かつ,空間又は物の形状,模様又は色彩を創出又は利用することによる,人の視覚を通じた美的な価値を追求する表現物」であることが必要である。

(2) この観点から,以下検討する。

前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。

原告は,平成6年,横浜市の各商店街団体が,同市のみなとみらい21地区や関内など同市中心部の活性化を図る一環として,同地区内の路線を循環する横浜市営バスの車体に横浜市街の特色を前面に打ち出したデザインを施すことを企画したのを受けて,市営バス1台の車体の両側面部,上面部及び後面部(合計4面)に,原告作品を描いた。原告作品は,別紙作品目録添付の原告作品写真のとおり,赤,青,黄及び緑の原色を用いて,人の顔,花びら,三日月,目,星,馬車,動物,建物,渦巻き,円,三角形など様々な図形を,太い刷毛を使用した独特のタッチにより,躍動感をもって,関内や馬車道をイメージして,描かれた美術作品である。

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