写真共有サイトで公開された風景写真につき、その職務著作性を否定した事例

 

▶令和4年12月22日知的財産高等裁判所[令和4(ネ)10058]

2 争点1(職務著作の成否)について(当審における控訴人の追加主張関係)

⑴ 前記前提事実と証拠及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、2014年(平成26年)3月24日、京都市内で、別紙著作物目録記載の原告写真を撮影し、同月中に、写真共有サイト「flickr」上に「Japanexperterna.se」の表示名、「Plum trees at the Kitano Tenmangu」(訳文・「北の天満宮の梅の木」)のタイトルで公開したこと、「Japanexperterna.se」の表示名をクリックすると、「Japanexperterna.se」の「About」のページに遷移し、同ページには「All photos posted on this account are taken and copyrighted by Y. 」(訳文・このアカウントに掲載されたすべての写真は、Yが撮影し著作権を保有しています。)との記載があること、原告写真は、写真の著作物であることが認められる。

上記認定事実によれば、原告写真の著作者は、その撮影者である被控訴人であり、原告写真の著作権及び著作者人格権は、被控訴人に帰属することが認められる。

⑵ これに対し、控訴人は、原告写真は、被控訴人がスウェーデン国の旅行会社である Japanexperterna 社が企画・運営する同国の観光客のための日本旅行におけるガイドとして職務上作成した著作物であり、同社のウェブサイトに掲載された原告写真は、「Ⓒ Japanexperterna.se」との法人名義で公表されているから、原告写真については職務著作(著作権法15条)が成立する旨主張する。

しかしながら、職務著作が成立するためには、法人その他使用者の発意に基づき、法人等の業務に従事する者が、職務上作成する著作物であって、公表名義が法人等であることの要件を満たすことが必要であるが(著作権法15条)、本件においては、原告写真が Japanexperterna 社の発意に基づいて作成されたことを認めるに足りる証拠はなく、また、原告写真が「flickr」上に公開された際、同社の著作名義が表示されたことを認めるに足りる証拠はないから、原告写真の公表名義が同社であるものとは認められない。かえって、前記⑴の認定事実によれば、「flickr」上には、「Japanexperterna.se」の表示名に関し、「All photos posted on this account are taken and copyrighted by Y. 」(訳文・このアカウントに掲載されたすべての写真は、Yが撮影し著作権を保有しています。)との記載があり、原告写真は、被控訴人(Y)の著作名義で公表されたものと認められる。

したがって、控訴人の上記主張は採用することができない

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