リツイート者は自動公衆送信の主体といえるか/リツイート行為による公衆伝達権侵害を否定した事例 | 著作権コンサルタントが伝えたいこと

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リツイート者は自動公衆送信の主体といえるか/リツイート行為による公衆伝達権侵害を否定した事例

 

▶平成28年9月15日東京地方裁判所[平成27(ワ)17928]▶平成30年4月25日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10101]

ウ 次に,流通情報2(2)の画像データのみを「侵害情報」と捉えた場合の公衆送信権侵害の主張について検討する。

(ア) 本件リツイート行為によってユーザーのパソコン等の端末に表示される本件写真の画像は,それらのユーザーの求めに応じて,流通情報2(2)のデータが送信されて表示されているといえるから,自動公衆送信(公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの[放送又は有線放送に該当するものを除く。]に当たる。

(イ) 自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成23年1月18日判決参照),本件写真のデータは,流通情報2(2)のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の主体は,流通情報2(2)の URLの開設者であって,本件リツイート者らではないというべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきであり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高裁平成23年1月20日判決参照)が,本件において,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は,本件アカウント3~5の管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも本件アカウント3~5のホーム画面に関する事情であって,流通情報2(2)のデータのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって,本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表示されることとなるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大することをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはできない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。

⑷ 公衆伝達権侵害(著作権法23条2項)について

著作権法23条2項は,「著作者は,公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。」と規定する。

控訴人は,本件リツイート者らをもって,著作物をクライアントコンピュータに表示させた主体と評価すべきであるから,本件リツイート者らが受信装置であるクライアントコンピュータを用いて公に伝達していると主張する。しかし,著作権法23条2項は,公衆送信された後に公衆送信された著作物を,受信装置を用いて公に伝達する権利を規定しているものであり,ここでいう受信装置がクライアントコンピュータであるとすると,その装置を用いて伝達している主体は,そのコンピュータのユーザーであると解され,本件リツイート者らを伝達主体と評価することはできない。控訴人が主張する事情は,本件写真等の公衆送信に関する事情や本件アカウント3~5のホーム画面に関する事情であって,この判断を左右するものではない。そして,その主体であるクライアントコンピュータのユーザーが公に伝達しているというべき事情も認め難いから,公衆伝達権の侵害行為自体が認められない。

このように公衆伝達権の侵害行為自体が認められないから,その幇助が認められる余地もない。

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