著作権法14条の趣旨/書籍のカバーデザインの共同著作者性を否定した(著作者の推定を覆した)事例

 

▶令和3年5月27日東京地方裁判所[令和2(ワ)7469]

(前提事実注)

原告とAとの間で締結した出版契約書には次の規定があった:

原告は,Aの権利保全のために所定の位置に下記の著作権表示(「本件著作権表示」)をする(9条)。

「Copyright © 2015「A」/ PIE International」

原告は,奥付部分に本件著作権表示が記載された本件書籍を出版した。

 

(2) 本件カバーデザインの著作者

著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」をいい(著作権法2条1項1号),著作者とは,「著作物を創作する者」をいうのであり(同項2号),本件カバーデザインは美術に属するから,本件カバーデザインの作成につき創作的に関与した者が本件カバーデザインの著作者であると認められるべきである(Aが同「著作者」に当たることは明らかであり,当事者間でも争いがない。)。

そして,著作権法14条は,著作物の原作品に,その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号,筆名,略称その他実名に代えて用いられるものとして周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は,その著作物の著作者と推定するとの旨を規定する。しかして,同条の規定は,著作者としての立証に困難を伴うことが多いことから,著作権を行使しようとする者の立証の負担を軽減する趣旨で,当該著作物を創作したことの立証に代えて,著作者を示す方法として通常の方法が採られている場合には,その著作者として表示された者を著作者と推定することとしたものである。そうすると,このような推定を覆す事実の反証があれば,この推定は覆り,当該著作物の作成につき創作的関与をしたと認められる者が,その著作物の著作者といえることとなる。

上記の観点から,原告が原告書籍(本件カバーデザインを含む。)の共同著作者といえるかについて検討すると,前記(1)で認定したとおり,本件書籍については,原告とAとの間で本件出版契約が締結されているところ,本件出版契約においては,Aが本件カバーデザインを含む本件書籍の「著作権者」であるとして,その著作者であることを前提に,「出版者」とされた原告に対し,本件書籍を複製・頒布することを許諾し,原告はその許諾を受ける対価としてAに対して著作権使用料を支払うことが約されていることが認められる。また,本件カバーデザインの表面には,「A」との記載や,「DESIGNED BY「A」 」との記載がされ,原告の記載はされていない。さらに,原告の従業員等が,本件書籍(本件カバーデザインを含む。)につき,Aとともに共同著作者として認められる程度にまで至るような創作的関与をしたことを根拠付ける具体的な事実の主張,立証はされていない。

これらからすれば,本件著作権表示にかかわらず,本件カバーデザインの著作者は,本件カバーデザインの表面に当該デザインを創作した者であるとの旨が明示され,本件出版契約においても本件書籍(本件カバーデザインを含む。)の著作者であることが前提とされ,ゆえに本件書籍(本件カバーデザインを含む。)の作成に創作的に関与した者であると認められるAのみであるというべきである。そして,原告は,これを前提に,Aの著作物である本件書籍を複製,頒布して出版する権利を取得したに過ぎず,このような原告をもって,本件書籍の共同著作者と認めることはできず,本件書籍(本件カバーデザインを含む。)が,原告とAの共同著作物であるということはできない。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/