創作性の要件(既存の著作物に依拠して作成されたイラストの創作性・二次的著作物性を否定した事例)

 

▶平成27年12月25日東京地方裁判所[平成27(ワ)6058]▶平成28年6月27日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10005]

(1) 著作権法による保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることを要する(著作権法2条1項1号)。ここで「創作的に表現した」というためには,当該成果物が,厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でなく,作成者の個性が表れたものであれば足りるというべきであるが,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,既存の著作物と実質的に同一のものを作成したにすぎないものは,既存の著作物の複製物であって,作成者の個性が発揮されたものとはいえないから,創作的な表現とは認められない。

 

[控訴審同旨]

既存の著作物につき,その表現上の本質的な特徴を損なわない限度において,具体的表現に修正,増減,変更等の改変を加えた場合,当該改変により,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至っていなければ,それは既存の著作物からの改変があったとしても,「複製」(著作権法2条1項15号)であると評価されるところ,以上によれば,本件イラストとNALシステム構成図の相違点の全てを考慮に入れてもなお,本件イラストにおいて,NALシステム構成図の表現上の本質的な特徴が損なわれたとはいえず,また,後記のとおり,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至ったとも認められないから,本件イラストにおいて,NALシステム構成図との同一性は失われていないと認められる。

(略)

以上によれば,本件イラストは,控訴人の原著作物とは認められない。

また,本件イラストは,NALシステム構成図に,思想又は感情の創作的表現が新たに加わったものとは評価できないのであって,控訴人の二次的著作物とも認められない。

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