法47条の「小冊子」に当たらないとされた事例

 

▶平成30年6月19日東京地方裁判所[平成28(ワ)32742]

6 争点6(著作権法47条の抗弁の成否)について

被告は,被告小冊子,被告パンフレット及び被告特別割引券が著作権法47条の「小冊子」に当たると主張する。

そこで検討するに,著作権法47条の「小冊子」とは,観覧者のために展示作品を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ,目録又は図録等をいい,観覧者に頒布されるものであっても,紙質,装丁,版型,展示作品の複製規模や複製態様,展示作品の複製部分と解説・資料部分の割合等を総合考慮して,観賞用の画集や写真集等と同視し得るものは「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。また,同条における「小冊子」は,あくまでも「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであることを前提としているから,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものや,実際に作品を観覧する者以外に配布されるものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。

これを本件についてみるに,被告小冊子は,A4程度の大きさの上質紙に,一竹作品22点を印刷しているところ,そのうち4点は1頁サイズ,1点は2/3頁サイズ,1点は1/3頁サイズとなっており,一竹作品の細部を鮮明に鑑賞できるものとなっている一方,解説部分は小さな文字で,わずかに記載されているだけであり,観賞用の作品集である被告作品集と比較しても,着物作品の掲載の仕方が似ている。また,被告小冊子には,一竹作品のほかにも,一竹美術館の外観や敷地,着物作品以外の展示品等も掲載されており,全体として一竹美術館自体を紹介する要素が強いものと認められる。

そうすると,被告小冊子は観賞用の作品集と同視し得る上,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものといえるから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。

また,被告パンフレットは,一竹作品を表紙デザインとして使用しているところ,作品についての解説や紹介は一切記載されていない。また,証拠によれば,被告パンフレットのうち日本語以外のものについては,被告HP上にアップロードされているものと認められ,実際に作品を観覧する者以外に配布されている。そうすると,被告パンフレットは,「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものではないから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。

さらに,被告特別割引券は,割引券という性質上,実際に作品を観覧する者か否かにかかわらず,美術館外部で多数人に配布されるものであり,その「お取り扱い店印」欄の記載によれば,現実にも美術館周辺の飲食店等において配布されているものと認められる。そうすると,「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものではないから,著作権法47条の「小冊子」には当たらない。

したがって,被告の上記主張はいずれも採用できない。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/