特殊車両の「警告シール」の著作物性・侵害性を認めた事例

 

▶平成29年11月16日東京地方裁判所[平成28(ワ)19080]▶平成30年6月20日知的財産高等裁判所[平成29(ネ)10103等]

(前提事実)

支援車Ⅰ型とは,災害時に被災地で消防隊員等が寝泊まりしながら救援活動を行うために,情報事務処理スペース,資機材積載スペース,トイレ,シャワー,キッチン,ベッド等が備えられている車両である

原告車両及び被告車両のキャブルーフ部には,立ち入ってはならない旨を示すため,絵柄と「NO STEP」という文字とを組み合わせたシール(以下,原告車両のシールを「原告警告シール」と,被告車両のシールを「被告警告シール」という。)がそれぞれ貼られている。

 

ウ 原告警告シールは,別紙8のとおり,図柄と「NO STEP」との文字を組み合わせた縦長の長方形状のものであり,上記図柄は,黒色で縁取られた黄色の略正方形状の四角の中に,白い足形のマーク(以下「足形マーク」という。)と対角線状の×印を描いたものである。×印は四角を縁取る黒い線とおおむね同じ太さの黒い線で描かれており,足形マークはこれらよりも若干細い黒い線で縁取られている。足形マークは,人間のすねから足先までを真横から見た形状であり,四角の右上にすねの部分が,左下に靴の部分が位置するような状態で斜めに描かれ,靴が左上の先端が上がった状態で斜めに描かれている。また,足形マークは,足首の部分が若干細くなっており,足首から上はズボンをはいた形を,足首から下は靴をはいた形をしている。靴のデザインは,足先に向けて細くなり,つま先がとがった形状となっているほか,靴底が平らではなく,かかと部分に段差がある形状となっている。

(略)

(3) 立入り禁止や踏込み禁止という趣旨をイラストで表現するに当たり,足のマークに×印を組み合わせること,目を引くように背景色に黄色を用いる5 こと,図柄と「NO STEP」という文字を組み合わせること自体は,ありふれた表現であるといえる。

しかし,立入り禁止や踏込み禁止という趣旨を表すイラストにおいて足のマークをどのように表現するかについては選択の幅があるところ,原告警告シールにおける足形マークは,前記(2)ウのとおり,ズボン及び靴をはいた状態の足を描いたものであり,靴は足先に向けて細くなり,つま先がとがっているなどの特徴を有するほか,四角の右上にすねの部分が,左下に靴の部分が位置するような状態で斜めに描かれ,靴の全体も左上の先端が上がった状態で斜めに描かれているという特徴を有する。このような足形マークと×印等を組み合わせたという特徴を有する原告警告シールは,必ずしもありふれた表現であるとはいえず,作成者の個性が表れ思想又は感情を創作的に表現したものであって,著作物に当たると認められる。

被告らは,原告警告シールの表現はありふれたものであると主張するが,上記で説示したところに照らし,採用することができない。

[控訴審同旨]

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/