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【二次的著作物に関する権利】著作権法第27条及び第28条の解説です 2/2

 

▶ 著作権法第28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利):

 

「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」

 

本条は、二次的著作物が利用される場合にはその原著作物(原作)も利用される関係を有することから、二次的著作物の利用に関して、原著作物の著作者(原作者)が、当該二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を専有することを規定したものです。

どういうことかと言うと、例えば、ある小説(原作=原著作物)の著作者(原作者)であるAさんの作品(小説)をBさんが(Aさんの許諾を得て)英語に翻訳したとします。この英語版の翻訳物は、二次的著作物になる(2条1項11号参照)のですが、これをCさんが複製して出版することを希望しました。この場合、Cさんは、英語版の翻訳物(二次的著作物)の著作者であるBさんから、複製ないし出版にかかわる利用について許諾を得なければなりませんが、原作者であるAさんは「二次的著作物(英語版の翻訳物)の利用(複製ないし出版)に関する原著作者の権利」を持つため、Cさんは、同時にAさんからも許諾を得る必要があるのです。

 

著作者(原作者)には、自己の著作物(原著作物)から二次的著作物を創作することを他人に許諾する権利(27条)が与えられていますが、本規定により、創作された二次的著作物の経済的な利用の場面においても、当該二次的著作物の著作者と同一の権利が認められることになります。このように、二次的著作物の利用行為に関して、そこに原著作物の著作者の権利が及ぶことになるため、二次的著作物の著作者(著作権者)であっても、自己が創作した二次的著作物であるからと言って、無条件に(原著作物の著作者(著作権者)の許諾を得ることなく)、当該二次的著作物を利用することは許されないものと解されます。原著作者の許諾なく利用行為を行えば、二次的著作物の著作者(著作権者)といえども、原著作者が有する二次的著作物の利用権(本条に規定する権利)を侵害することになります。注意してください。

 

具体的に、二次的著作物の原著作者が有することになる「当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利」の内容は、「当該二次的著作物」の種類に応じてケースバイケースで異なってくることになります。

(例) オリジナル脚本(原著作物)→映画(二次的著作物)…脚本(言語の著作物)に「頒布権」(26条参照)は認められていないが、二次的著作物である映画(の著作物)には「頒布権」が認められているため、その映画の原著作物である脚本の著作者(脚本家)には、その映画の利用に関して、「当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利」である「頒布権」が認められることになる。

 

以上のように、原著作者に、二次的著作物の経済的利用の場面で「当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利」が認められるということは、二次的著作物の利用については、当該二次的著作物の著作者(著作権者)の権利とその原著作物の著作者(著作権者)の権利とが併存することを意味します。そのため、二次的著作物の利用を欲する者は、その二次的著作物の著作者(著作権者)の許諾はもちろんのこと、その原著作者(著作権者)の許諾をも得なければならないことになります。

 

具体例を使って、以上の話をまとめてみます。

 

(例) 小説(原著作物)→脚本(二次的著作物)→映画(二次的著作物・小説からみると“三次的著作物”)

 

例えば、ある「小説」(原著作物)を「脚本」にした場合に、二次的著作物であるその「脚本」を複製(21条)したり、映画化(27条)したりするときは、脚本家の許諾だけでなく、原作者である小説家の許諾も必要になります(28条)。また、ある「小説」(原著作物)を脚色して「脚本」(二次的著作物)とし、その脚本をもとに「映画」を製作したような場合、当該「映画」は「三次的」著作物とも言えそうですが、当該映画についても法律上は「二次的著作物」であり、その「映画」の利用行為(例えば、劇場上映や放送、インターネットによる配信など)には、「映画」の著作者(著作権者)、「脚本」の著作者(著作権者)だけでなく、おおもとの「小説」の著作者(著作権者)の許諾も必要になります(28条)。この点、非常に紛らわしいので、十分に注意してください。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/