法41条の意義と解釈

 

▶平成10年02月20日東京地方裁判所[平成6(ワ)18591]

3 本件絵画3の平成4年12月2日付け紙面への掲載について

(一) 成立に争いのない(証拠)によれば、次の事実が認められる。

同日付け同新聞朝刊の一面左上部に「幻のバーンズコレクション日本へ」との五段の大見出し、及び「セザンヌなど名画80点公開」、「94年1月、国立西洋美術館」との小見出しの下に、発信地と執筆記者名が冒頭に付された四段にわたる本記と本件絵画3を含む3点の絵画のカラー印刷の図版からなる記事が掲載された。

右記事の内容は、「セザンヌやマチスなどの第一級の絵画を所蔵するアメリカのバーンズ財団は、画集でも見られない゛幻のコレクション″で知られるが、その中からよりすぐった作品を公開する「バーンズコレクション展」が94年1月から東京の国立西洋美術館で実現することとなった。主催する読売新聞社と同美術館が、1日までに財団と基本的な合意に達した。財団は現地で3日、日本を含む初の世界巡回展の構想を発表する予定で、国際的に美術ファンの話題を集めるのは必至だ。」との書き出しで、バーンズ財団の紹介、コレクションは極めて質が高いが、公開も週末に人数を限ってで、バーンズの遺言に従って、売却はもちろん、他館への貸出しや画集への掲載も禁じられたことから、名画の実像は明らかにされなかった旨、コレクションが初公開されることになったのは、ギャラリーの老朽化に伴う改修のためであり、来年のワシントン・ナショナル・ギャラリーとフランスのオルセー美術館に続いて、再来年の1月から4月にかけて東京展を開催する旨、バーンズコレクションは、180点のルノワール、69点のセザンヌなど、総数は2500点を超える旨の説明が続き、「このうち今回出品されるのは「カード遊びをする人たち」など20点を数えるセザンヌを筆頭に、ルノワールが「音楽学校生の門出」など16点、マチスが「生きる喜び」など14点のほか、スーラ「ポーズする女たち」、ゴッホ「郵便配達夫ルーラン」、ルソー「虎に襲われた兵士」、A「曲芸師と幼いアルルカン」など計80点。いずれも初めて国外で公開される傑作ばかりだ。」と結ばれている。

また、絵画の図版は、本件絵画3が約98mm×約57mm、セザンヌの「カード遊びをする人たち」が約97mm×約135mm、ルノワールの「音楽学校生の門出」が約85mm×約54mmの各大きさで掲載されている。

(二) 右事実によれば、右記事は、優れた作品が所蔵されているが、画集でも見ることのできないバーンズコレクションからよりすぐった作品を公開する本件展覧会が平成6年1月から東京の国立西洋美術館で開催されることが前日までに決まったことを中心に、コレクションが公開されるに至ったいきさつ、ワシントン、パリでも公開されること、出品される主な作品とその作家を報道するものであるから、著作権法41条の「時事の事件」の報道に当たるというべきである。そして、本件記事中で、本件展覧会に出品される80点中に含まれる有名画家の作品7点が作品名を挙げて紹介されている中の一つとして本件絵画3が挙げられているから、本件絵画3は、同条の「当該事件を構成する著作物」に当たるものというべきである。

また、複製された本件絵画3の大きさが前記の程度であること、右記事全体の大きさとの比較、カラー印刷とはいえ通常の新聞紙という紙質等を考慮すれば、右複製は、同条の「報道の目的上正当な範囲内において」されたものと認められる。

よって、右記事中の本件絵画3の利用については、時事の事件の報道のための利用の抗弁は理由がある。

【より詳しい情報→】http://www.kls-law.org/